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男性介護者が「一人で抱え込んでしまう」理由と、相談がリスク管理になる話

介護する人のひと休み

初めて訪問したお宅で、 布団の下には薄汚れたオムツが何枚も敷かれていました。

 お母さんを一人で介護している息子さんは、
「家族の問題は自分たちで解決しなきゃいけないと思っていて……
誰にも言えなかった」
そう言って、申し訳なさそうに目を伏せました。

今のシニア層の男性は、「弱音を吐くな」「自分のことは自分でやれ」
そんな価値観の中で生きてきた世代です。

だからこそ、 誰にも頼らず、誰にも愚痴をこぼさず、 一人で踏ん張り続けてしまう。
その姿から、 孤軍奮闘している苦しさが、痛いほど伝わってきました。


責任感が強く、大切な人を守ろうとしているからこそ、
一人で抱え込んでしまう。

この記事では、 そんな男性介護者が「助けを求めること」に 少しだけ納得できるように、
男性介護者と関わってきた看護師が、
相談は甘えではなく、大切な人を守るための「リスク管理」との視点からお話しします。

なぜ男性は相談できないか3つの理由

総務省の調査(令和3年 社会生活基本調査)でも、
男性の介護時間は年々増加しています。

さらに、「誰にも相談せず、一人で抱え込んでいる」男性介護者の割合は、
女性の約2倍
という分析もあります。

一人で抱え込む男性介護者は、
決して、あなただけではありません。

なぜ男性は、相談せずに抱え込んでしまうのか?(3つの主な理由)


① 「男は強くあるべき」というジェンダーバイアス

日本の50代以上の世代には「一家の主が弱音を吐いてはいけない」
「家庭の問題は自力で解決すべき」という無意識の刷り込みがあります。

相談することを「敗北」や「能力不足」と感じてしまう。

社会的ネットワークの希薄さ

多くの男性は仕事を通じて人間関係を築いてきたため、
退職後や介護生活に入ると、地域社会や友人との繋がりが薄くなりがちです。

「愚痴を言える飲み仲間」はいても、
「介護の悩みをさらけ出せる相手」がいないのが現状です。

「解決策」を求めてしまう思考

女性は「共感」を求めることでストレスを解消する傾向がありますが、
男性は「解決策」が見つからない話(単なる愚痴)をすることに価値を感じにくいと言われています。

話したところで状況は変わらない」と論理的に諦めてしまうのです。

相談しないことで起きる「見えないリスク」

「一人で頑張ること」は美徳ではなくリスクを高める行為かもしれないのです

介護者自身の健康崩壊

  • 睡眠不足、腰痛、うつ傾向など、本人が気づかないうちに心身が限界を迎える
  • 「介護者が倒れたら、守りたかった人も守れなくなる」現実

不適切な介護への転落

  • 知識不足や疲労から、意図せず危険なケアをしてしまう
  • オムツ交換の方法、床ずれ予防、服薬管理など「知らなかった」では済まない事態

虐待・事件化のリスク

  • 孤立した介護環境は、追い詰められた状況を生む
  • 実際の統計:男性介護者による深刻な事例が報告されている現実

相談は「弱音」ではなく、大切な人を守り続けるための戦略です。

 企業でリスク管理をするように、
介護にも「相談」というセーフティーネットが必要なのです。

介護は「専門知識が必要な仕事」

  • 医療・福祉の専門家でさえチーム戦
  • 素人一人で完璧にできるはずがない前提を持つ

早期相談が選択肢を増やす

  • 「もう限界」になってからでは選べるサービスが限られる
  • 余裕があるうちに情報を得ておくことの価値

相談先は「味方」であり「パートナー」

  • ケアマネージャーや地域包括支援センターは、
    責めるのではなく支えるために存在する
  • 「こんなこと相談していいのか」→ それを判断するのが専門家の仕事

こんなサイン、見逃していませんか?

介護をしていると、
「こんな自分じゃダメだ」と感じてしまう瞬間があるかもしれません。


介護をしていると、
自分でも驚くような行動をとってしまうことがあります。

・大声で怒りをぶつけてしまって、ハッとした
・どうしたらいいのか分からず、泣きたい気持ちになった
・その場から逃げるように、無視して外出してしまった

これらは「性格の問題」ではありません。
心と体が限界に近づいているサインです。

こうした出来事が何度も重なっているなら、
それは介護におけるヒヤリハットが続いている状態と考えていいでしょう。

この段階で必要なのは、
ひとりで頑張り続けることではありません。

とにかく、誰かにSOSを出してください。
早いほど、選択肢は多く残ります。

一人で抱え込まないための、具体的な相談先と使い方

相談は「一度きり」じゃなくていい。必要な時に何度でも使える資源です

実際に相談という行動に移せなくても

「相談先がある」ということを知っておくだけでもいいですよね

✅ 困りごとの内容によって、相談先は違っていて大丈夫です

「どこに相談していいかわからない人」→包括支援センター(最初の窓口)

  • どこにある?どう探す?

自治体のホームページで
「地域包括支援センター 〇〇市」や
「高齢者 相談 〇〇市」
などで検索すると、正式名称とあわせて、
その自治体独自の呼び名一覧が出ていることが多いです。

もし「うちの地域には地域包括支援センターがない」と言われる方がいても、
単に「高齢者あんしんセンター」「熟年相談室」など別の名前で設置されているだけ、
という場合がほとんどです

  • 「とりあえず話を聞いてほしい」でOK
  • 匿名相談も可能な場合がある
  • 電話か来所して相談する

すでに介護サービスを使っている人→ケアマネージャー(介護のコーディネーター)

  • すでに要介護認定を受けている場合
  • サービス調整だけでなく、家族の悩みも聞いてくれる

    もしもケアマネと相性が悪い、変えて欲しい時は変更できます
    「言いにくい」と感じる場合は、包括支援センター経由でも相談できます

対面で話を聞きたいorオンラインで学んだりつながりたい→介護者の会・オンラインコミュニティ

  • 同じ立場の人と話す価値
  • 「解決策」だけでなく「自分だけじゃない」安心感
  • 参加は無料・予約制が多く、地域包括支援センター経由で紹介も可能


☑️ 介護者と支援者の全国ネットワーク(男性介護ネット):

2009年発足の全国組織で、講演会、総会、介護記録共有、リレートークを実施。
荒川区「オヤジの会」(日本初、1994年開始)や山梨「やろうの会」などが加盟。​
常設オンラインコミュニティは少ないですが、
男性介護ネットのウェブサイト(dansei-kaigo.jp)で
イベント情報共有や全国交流が行われ、Zoom講演などが活用されています。

☑️  男の介護教室: 石巻発祥で全国展開(宮城7カ所ほか)。
  調理・移乗・口腔ケアの実習、ディスカッションで孤立防止。​


☑️ 地域の集い例: 長崎「男性介護者ケアの集い」(2か月ごと)、
  三田市「ぼちぼちやろう」、
  昭島市「男性介護者の会」(料理教室・勉強会)。

⚠️ なるべく公式ネットワーク経由が信頼性高いです

電話相談・SNS相談

急な困りごとなどに

  • 対面が苦手な人のための選択肢
  • 24時間対応の窓口も

男性向けのものに限ったものではありませんが、

代わりに、介護全般やメンタルヘルスをカバーする以下の24時間窓口が利用可能です。

24時間電話相談窓口

  • 0120-279-338(つなぐ・つつむ): 高齢者・介護相談を24時間対応。
  • よりそいホットライン:
    介護・メンタル・生活全般の悩みを24時間無料で相談可能
    (050-3655-0279、ガイダンスで専門対応選択可)。​
  • こころの健康相談統一ダイヤル:
    介護ストレスや心の負担に特化(0570-064-556、通話料有料)。​

最初の一歩は「勇気」じゃなくていい

小さな一歩から始める

  •  立派な決意はいらない
  • 「全部話さなきゃ」と思わなくていい
  • 「ちょっと聞きたいことがあって」でスタート

「家族のため」と考える

  • 自分のためではなく、守りたい人のための行動
  • 「母を守るために、俺が倒れるわけにはいかない」
  • 「情報を集める」だけでも十分

「プロに任せる部分」を作る勇気

  • 「一人で頑張らなくていい」
  • デイサービスやショートステイは「逃げ」ではなく「継続のための休息」

まとめ     あなたはもう十分やっている

あなたが一人で抱え込んでいるのは、
「無責任だから」ではなく、
「責任感が強すぎるから」です。

その責任感を、 大切な人を守り続けられる形に変えてほしいのです。

相談は責任感の延長線。
相談することは、弱さではなく、 長く・安全に・介護を続けるための戦略です。

守るために使えるものは使いましょう。

一人で頑張り続けることで、誰かを守ることにつながらなくなる前に。

だからこそ、限界の前に、
今日、 たった一本の電話、たった一度の相談から始めてみませんか?

あなたとご家族が、少しでも穏やかな日々を過ごせますように。

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