
「介護は突然やってくる」と言われます。
でも実際には、1〜2年前から小さな兆候が現れていることが多いものです。
それでも私たちは、その変化をどこかで「見て見ぬふり」してしまう。
なぜなら、事実を認めると、
“面倒なことが一気に押し寄せてくる”気がするからです。
思い返すと、私自身もそうでした。
父から
「母さん、最近あまり料理をしなくなったんだよ」
と聞いたとき、心の中で
「来たか……」
と思いながらも、同居している父に任せきりにして、深くは聞かずにいたのです💦
地方に暮らす80代の両親。
母の様子がおかしくなってから、父は一人で奮闘していました。
現在、主な介護者のうち男性が占める割合は約4人に1人。
特に「息子が母親を介護する」ケースは年々増加しており、
仕事と介護を両立する“ビジネスケアラー”の問題も深刻化しています。
今回紹介する本は、
そんな葛藤の渦中にあった50代独身男性が、
認知症の母親との生活を正直に綴った介護の記録です。
書籍情報

書籍名:母さん、ごめん。50代独身男の介護奮闘記
著者:松浦晋也
出版社:日経BP社
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概要
50代独身男性が、同居する認知症の母親を介護する日々を綴った実録。
介護の現場で起こる「あるある」が、驚くほど率直に描かれています。
正直、「ここまで書く?!」と驚きました。
それだけ著者は、
「同じような思いをしている人の役に立ちたい」
という気持ちで、赤裸々に言葉を紡いだのだと感じます。
この本をおすすめしたい人
・そろそろ親の介護が始まるかもしれないと感じている人
・介護が始まったばかりで、何から手をつければいいかわからない人
・特に、母親を介護する立場になった男性介護者
・介護の悩みを誰にも相談できず、孤独を感じている人
この本を手に取ったきっかけ
以前、「男性介護 排泄 悩み」というテーマで記事を書いたことがあります。
その延長線上でこのタイトルを見たとき、
「きっと排泄の悩みも書いてあるに違いない」と直感しました。
実際、悩みがかなり具体的に書かれています。
しかもその章の前置きには、
「辛い記憶だけど、書かないわけにはいかない」
という一文がありました。
その言葉を読んだだけで、
「よくここまで書いてくれた……」
と、胸がいっぱいになりました。
介護される側の尊厳を守るためには、
介護する側も、正直に語っていい。
そのことを、この本は教えてくれます。
印象に残ったフレーズ

「介護は事業であって、家族が頑張ればできるというものではない」
この一文にはハッとしました。
「事業」という言葉は一見、冷たく他人行儀に聞こえます。
でもこれは、
一人で抱え込むのではなく、
多職種の力を借りて進めていく“チーム戦”だという意味なのだと思います。
さらに、こんな記述もあります。
「認知症に対する対応としては、早期に介護する側に過大なストレスがかからない体制を構築することが何よりも重要になる。公的介護保険制度の利用は必須だと思った方がいい」
「お世話になる」という発想から、
「お互い様」という発想へ。
誰でも年を取り、人生の終点は致死率100%。
介護のプロの手を借りながら、
本人・介護する人・支える専門職が連携して
「その人らしく生きる」ことを目指す。
そんな介護のイメージが、少しずつ形になりました。
本から学んだこと・気づき
思い込みが判断を鈍らせる
著者は、海外に住む妹さんから
地域包括支援センターへの相談を勧められていました。
それでも「自分たちが対象になるとは思わなかった」と言います。
行政の窓口は、
どんな相談ができるの?、何を聞けば?
イメージが湧きにくいですよね。
「これくらい大丈夫」が限界を超えさせる

「まだ大丈夫」
「自分がやれば何とかなる」
そう思っているうちに、ストレスは静かに蓄積し、
気づいたときには冷静な判断ができない状態に追い込まれていく。
その過程が、正直に描かれていて、
読んでいて胸が苦しくなりました。
良かれと思ったことが裏目に出る

洗濯機を新調したら、
お母様が使えなくなってしまったというエピソード。
介護の現場ではよくある話です。
コンロ、洗濯機、掃除機……
便利になるはずが、操作できず
「できていたこと」が一つ失われてしまう。
使い慣れたものの力は、大きいと実感です。
心構えの変化 ― 自立のアップデート
高齢者が人に頼れないのは、
「頑固だから」ではないのかもしれません。
これまで
「大人=自立」
「自分のことは自分でやる」
という価値観で生きてきたからこそ、
助けを求めることに抵抗がある。
自立とは、
何でも一人でできることではなく、
困ったときに助けを求め、
その選択を自分で決められること。
そんな“自立のアップデート”が必要なのだと感じました。
共感したエピソード

・認知症の前兆があっても、確信したくなくて見ないふりをしてしまう気持ち
・どうやって医療機関に連れて行くか悩む場面
・テレビ通販の定期購入問題
どれも「あるある!」とうなずくものばかり。
また、
「嫌だ嫌だと言っていたデイサービスに、
イケメン男性スタッフがお迎えに来たら、すんなり行った」
という場面には思わず笑ってしまいました。
いくつになっても、
身だしなみや異性の目を気にする気持ちは自然なものですよね。
自分の経験と重ねて
認知症の兆候は、やはり1〜2年前からありました。
同じ物を買う、部屋にこもる、料理を面倒くさがる……。
80歳まで働いていた「役割」がなくなったことも、
大きかったのだと思います。
一方で、私は一人で抱え込まず、
困ったときはケアマネジャーや主治医に相談してきました。
この違いは、とても大きかったと感じます。
読後の変化

高齢者が「人の世話になりたくない」と言うのは、
単なる頑固さではない。
「誰かの役に立ちたい」
「自分のことは自分で決めたい」
そのプライドこそが、その人らしさの核なのだと腑に落ちました。
「一人で抱え込まないで」と伝えるだけでなく、
「どこに」「誰に」「どう相談するのか」
行動が見える形で示すことの大切さも、改めて学びました。
まとめ

・著者が物書きであることもあり、介護の現実が非常にわかりやすい
・綺麗事だけで済ませず、本音が丁寧に描かれている
・認知症の親を自宅で介護する現実が具体的に想像できる一冊
介護に正解はありません。
でも、「一人で抱え込まなくていい」ということだけは、
この本ははっきり教えてくれました。
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