
介護は「親孝行の延長」だと思っていませんか? 私もつい最近までそうでした。
同居で穏やかに介護を続けられる人もいれば、 遠距離の親を呼び寄せて仕事と介護に追われ、 離職や共倒れになってしまう人もいます。
この違いは何なのか—— その答えを探して出会ったのが『親不孝介護』でした。 片道5時間の距離に住む父の近況を聞き、 “介護がいよいよ現実になる”と感じたタイミングでもありました。
読んでみて分かったのは、 介護に必要なのは「頑張り」よりも 適切な距離と、親との対話だということ。
この記事では、介護の現場に長く携わってきた私が、
そう遠くない未来に起こりうる遠距離介護を自分ごととして考えながら、
本を読んで「心に刺さったこと」「明日からできること」をまとめます。
書籍情報
書籍名:「親不孝介護」
著者名:山中浩之
川内 潤(NPO法人 となりのかいご)
出版社:日経BP

親不孝介護 距離を取るからうまくいく
本を手に取ったきっかけ

父は片道5時間の地方で一人暮らし。80代になり、 「ここを終の住処にする」と決めて、私はその気持ちを尊重してきました。
でも最近、LINEで 「車庫入れで2回ぶつけた…」とサラッと送られてきて、 胸の奥がざわっとしたんです。
介護は突然くる、とよく言われますが、 この時ばかりは他人事ではいられません。
そんな私に、介護相談の方が 「遠距離介護なら、この本は一度読んでおくといいですよ」と 勧めてくれたのが『親不孝介護』。
タイトルを見た時は「親不孝?どういうこと?」と 首をかしげましたが、読み進めるほど “親孝行とはこうあるべき”という思い込みがほぐれていきました。
心に刺さった4つのポイント

① 介護は“異常事態”ではなく“日常の変化”
介護とは親が少しずつ衰えていく日常を支えていくプロセス。 仕事のように“目標達成の成功メソッド”では回らない。
② 優秀な人ほど介護離職しやすい理由
優秀な人ほど「親のために完璧にやろう」として、 仕事のやり方(計画→実行→成果)を介護に持ち込んでしまう。 しかし介護は撤退戦で、成果を積み上げる世界とは違います。
③ 老いが奪っていくものは「役に立てている感覚」
認知症に限らず、老いで失われやすいのが 「私は今、この人の役に立っている」という感覚。 これを取り戻す支援こそが理想だと心に残りました。
④ “やりすぎない子ども”の方が介護は長続きする
手伝いすぎると、親の「できること」を奪ってしまう。 家をピカピカにしてあげても、 親からすると「物の場所が変わった」だけで困ることも。
ここでようやく、 “程よい距離感の正体”が腑に落ちました。
遠距離介護の「あるある」と重なった瞬間
親に介護が必要になったとき、
「一緒に暮らした方がいいのかな」
「近くへ呼び寄せた方が安心かな」 と
揺れるのは自然なこと。
私も母の手術のときに悩みました。 でも、自分たち家族の生活も大切。 母の暮らし方を変えない選択をしたことを思い出します。
そして私はずっと、 介護は自分たちだけで完結させるもの と思い込んでいました。
でもその考え方こそが、 自分を追い込む“危険な思い込み”だったと気づきました。
遠距離でも、同居でも、 ひとりで背負い込む介護は長く続かない。 頼ることは親不孝ではなく、 むしろ親の生活を守るために必要な選択なのだと思います。
講演会で学んだ“頼る力”

以前、講演会でこんな話を聞きました。
親を介護するとき、特に男性(夫や息子さん)が主介護者の場合は、必ず支援者とつながり、孤独にならないようにすることが大切だと。
男性は仕事モードと介護を同じように捉えてしまうので、完璧に介護しようとする傾向が強く、
共倒れのリスクが高いそうです。
介護離職は介護開始から2年ぐらいで起きていることが多いのもうなずけます。
だからこそ、頼る力を味方につけることが大事です。
例えば、こんな頼り方があります:
- 地域包括支援センターに相談して、介護保険や訪問サービスの情報をもらう
- かかりつけ医やケアマネジャーに定期的に状況を報告し、アドバイスを受ける
- 親族や友人に小さなサポートをお願いして、全部を自分で抱え込まない
こうした小さな“頼る力”を味方につけるだけで、 共倒れを防ぎながら介護を続けられます。 一人で抱え込む必要はありません。

介護が始まってもいないのに地域包括支援センターに連絡するの?

そうなんです!
私は「介護相談」に行った際、父の運転が気になって・・・
すると相談員さんが「お父様の住む住所の地域包括支援センターに連絡してみて」と。
正直、勇気が要りました💦 けれども、
事情を話し「それは心配ですね」「訪問してみても良いですよ」と温かなお返事が・・・
私の連絡先も伝えて「つながった〜」とホッとしました。
勇気をだして相談してみてよかった☺️
本の中でもこう書かれています
包括に話をしに行くタイミングはどうも 親がおかしいぞ と感じる前でも大丈夫
介護の“つらさ”の正体に気づいた瞬間

介護ってつらいというイメージがないですか?
どうしてなのかなと考えたことあります?
今までは認知症や排泄の世話などがイメージとしてありました。
親は子どもにとっての安全基地。
そうなんですよね・・・
親はいつまでたっても自分の安心や安全のよりどころなんですよね。
それが、身なりをあまり気にしなくなったり、食事が上手くできなくなったりすると、
「昔の母はこんな人じゃなかったのに」と戸惑うことがでてきて・・・
「もっとしっかりして!」と自分の”こうあるべき”という親像に戻ってほしくなって😢
イライラしてしまっていたのですね。
そして、自分の安心や安全が少しずつ揺らぐ感覚に向き合わなくてはならない。
だから介護はつらく感じるのだと理解できました。
でも同時に、これは親と向き合うことで得られる大切な気づきでもあります💕
少しずつ受け入れながら寄り添うことができるといいなと思います。
読んで実践したいと思った小さな一歩
① 地域包括支援センターと早めにつながる
電話番号を登録し、「まだ早いかな…」の段階で相談する。 介護者の相談に乗るのも地域包括の大切な仕事なのだそうです。
② 親の価値観を知る
親のことは知っているようで知らないことが多い。 元気なうちに、価値観や習慣、こだわりを聞いておくことが大切。
改まって聞くとやっぱりなんだか恥ずかしいですよね。
「今、好きなものってなんだろう」
「何を大切にしているのかな?」
「はまっていること、あるのかな?」
心にピン°留めしておいて、いざという時に聞いてみましょうよ😄
③ “最初の相談”のタイミングがいちばん大事
介護が始まってから抜けるのは難しい。 だからこそ、最初にどう動くかが大切だと学びました。
離れて介護する人へのメッセージ
近くにいないと親孝行できない—— そんな呪縛からどうか自由になってほしい。
大切なのは距離そのものではなく、
親と適切な距離を取るための対話。
自分の生活を守りながら続けられる介護こそ、 親にとっても子どもにとっても幸せだと思います。
遠距離でも大丈夫。 あなたのペースで、あなたの暮らしを守りながら、 親との“ちょうどいい距離”を見つけていけますように。

