
「どうしても、オレにはやってもらうのは嫌だって……」
排泄のケアを、夫にしてもらいたくないと拒む妻。
「このことだけは、やっぱり一番きつい。」
認知症の奥様を介護されている夫の言葉。
どちらの気持ちも想像できて、返す言葉に迷ってしまったことがありました。
お母様や奥様の介護をされている男性介護者さんの中にも、
同じように感じている方は多いのではないでしょうか。
排泄介助は、介護の中でも「誰にも相談しにくい」場面。
そして、身体的にも精神的にも、最も負担になりやすいケアのひとつです。
この記事では、そのつらさの理由と、少しでも負担を軽くする工夫を整理していきます。
プロの介護士でさえ、「これは慣れるものではない」と口をそろえます。
特に男性介護者は、「自分が我慢すればいい」と、つらさを一人で抱え込みやすいのかもしれません。
だからこそこの記事では、
「やっぱりこれが一番きつい」と感じている男性介護者さんに向けて、
気持ちの整理のヒントと、少しでも負担を軽くするための対策をまとめました。
できる範囲で、一緒に考えていきましょう。
排泄介助が、男性介護者にとって難しく感じやすい理由

「なぜ、こんなにも気持ちが重くなるのか」。
その理由を、少しだけ言葉にしておくことで、心が軽くなることがあります。
介護される側の気持ち
お母さまや奥さまにとっても、排泄介助は強い抵抗を感じやすい場面です。
「息子に」「夫に」介助されるという状況は、とくに羞恥心を刺激しやすく、
「申し訳ない」「見せたくない」といった気持ちが強く表れることがあります。
介護する側(男性介護者)の気持ち
同様に、介護する側も「自分がこれをしていいのか」という迷いや、
気持ちの混乱を感じることがあります。
「きつい」と感じたくないけど、やっぱりきつい。
その葛藤は、あなたが弱いからではなく、人間としてとても自然なことです。
「回数が増えた」と感じるときに知っておきたいこと
介護が進むにつれ、排泄介助の頻度が増えていくことがあります。
「いつ頃から?」「なぜ?」を把握しておくと、心の準備ができて少し楽になります。
頻度が増える主な原因
- 認知症の進行により、便意や尿意を感じにくくなることがある
- 筋力や神経機能の低下で、排泄のコントロールが難しくなることがある
- 便秘のあとに、まとめて失禁が起こることがある
排泄ケアは、少しずつ形が変わっていきます
介護には、はっきり分けられる段階があるわけではありませんが、
排泄介助の関わり方は、少しずつ変化していくことが多いです。
- 初期:声かけや見守りが中心
- 途中から:誘導や一部介助が必要になり、失敗が増えやすい
- さらに進むと:オムツの使用や、昼夜を問わない対応が必要になることもある
「今はこのあたりかな」と、
大まかに把握できていれば十分です。
ここからは、
「がんばり方」ではなく、
少し楽になるための工夫を紹介します。
全部やらなくて大丈夫。
「これならできそう」と思うところだけ、拾ってください。
対策① におい・後始末の負担を減らす工夫

― 気持ちを削らないための「道具」という選択 ―
排泄介助がつらく感じる理由のひとつに、
「終わったあと、気持ちが切り替えられない」ことがあります。
においが残る。
後始末に時間がかかる。
次の失敗を考えて、ずっと気を張ったまま。
こうした積み重ねが、
「排泄介助=一番きつい」という感覚を、少しずつ強くしていきます。
でも、それは気持ちが弱いからではありません。
環境や負担が、ただ重すぎるだけです。
「におい」の問題は、気持ちの問題でもある
「臭い」の問題は、介護者の精神的な負担に直結します。
においが残らない環境をつくることは、
毎日の気持ちを守ることにつながります。
消臭袋
においを残さないだけで、気持ちが切り替わる
排泄物の処理で、いちばんつらいのは
「においがいつまでも残ること」。
においが消えないと、
頭と気持ちが休まりません。
消臭袋は、
この「終わったはずなのに、終われない感覚」に
区切りをつけてくれる道具です。
もちろん、必須ではありません。
ですが、
「少しでも楽になるなら、使っていい」
そんな選択肢があると知っているだけでも、
気持ちはずいぶん違ってきます。
最近の消臭袋はかなり優秀だと感じています。
オムツ交換後や、ポータブルトイレの後始末に使います。
選び方のポイントは、
・サイズ
・破れにくさ
・ニオイ漏れの有無
レビューを参考にすると失敗しにくいです。
ゴミ箱
後始末を「一仕事」にしないために
毎回、別の場所へ捨てに行く。
袋を何重にもする。
こうした小さな手間が、
知らないうちに心の余裕を削っていくこともあります。
処理を簡単にする工夫は、
介護を続けるための現実的な知恵です。
消臭袋を使ったうえで、
ニオイが漏れにくいゴミ箱を選ぶと、
室内のにおいは大幅に減らせます。
選び方のポイントは、
・サイズ
・形
・フタの開け閉めのしやすさや扱いのしやすさ
オムツ
「合わない」は、よくあること
オムツの選び方には、
「性別」「自立度」「サイズ」「尿量」「交換頻度」など
いくつものポイントがあります。
たとえば、
お腹まわりはLサイズ相当でも、
足の付け根が細くなってきて、
漏れが起こりやすくなることは珍しくありません。
ケアマネさん、ヘルパーさん、訪問看護師が入っていれば、
サイズや種類の相談にのってもらえます。
事業所によっては、
M・Lサイズなどのサンプルや、
メーカー違いのオムツを持ってきてもらえることもあります。
迷ったら、遠慮せず声をかけてください。
・自立度が高い方 → パンツタイプ
・寝て過ごす時間が多い方 → テープタイプ
・交換頻度が高い場合 → オムツ+パッドの併用
(同じメーカーでそろえると、漏れを減らしやすい)
パッド・シーツ
パッドは、オムツの中に入れて吸水量を増やすためのもの。
シーツは、万が一の漏れに備えるためのものです。
防水シーツは、
ベッドに帯状に敷くタイプを勧められることが多いですが、
動く頻度が高い方の場合、
どうしてもズレたり、シワができたりして
ストレスになることがあります。
そんな時は、
ベッド全体を覆うボックスタイプのシーツも選択肢です。
これらの道具は、
「ちゃんとやるため」のものではなく、
あなたの気持ちを守るためのものです。
合わなければ、使わなくて大丈夫です。
対策②家族だけで抱え込まない選択肢
「全部、自分で対応しなければ」
そんな気持ちは、介護者の心と体を、思っている以上の速さで削っていきます。
介護は、がんばり続ける人ほど、限界に気づきにくいものです。
「プロに頼る」

介護の場面で「プロに頼る」という選択は、
逃げではありません。
介護を続けるための、賢い判断です。
男性の介護者には、
とても優しく、相手を気づかう方が多い印象があります。
「ヘルパーさんを頼もうか?」
「誰かに手伝ってもらおうか?」
そう聞いて、
奥さまやご本人から「大丈夫」「まだいい」と返ってくると、
その言葉を尊重して、
自分が限界を超えるまで抱え込んでしまう方も少なくありません。
本人より先に、相談していい
ここで大切なのは、
「ご本人が限界になる前に、第三者に相談する」という視点です。
だます、ということではありません。
介護者自身が壊れてしまわないために、
先に外の手をつなぐという選択です。
地域包括支援センターや、ケアマネは、
「今すぐ何かを決める場所」ではないです。
「この状況、どう考えたらいいですか?」
その一言からで大丈夫です。
頼れる先の例

・訪問介護(ホームヘルパー)
排泄介助を含む日常の介助を、
自宅に来て対応してもらえるサービスです。
介護保険を利用できる場合があります。
メリット
・排泄介助の負担を分けられる
・介護者が休む時間を確保できる
・デイサービス・ショートステイ
一時的に介護を他者に任せ、心と体を休ませる
・地域包括支援センターへの相談
「何から始めればいいか」を一緒に整理
「一人で全部やる」ことには、
誰にとっても限界があります。
早めに相談することは、
介護を途中で折れないための準備です。
声かけ編 排泄介助の際に使える言葉

介助前|拒否感を強めない一言
最初の声かけは、
「急かさない」
「決めつけない」ことが大切。
・「そろそろ行きましょうか」
・「ゆっくりで大丈夫ですよ」
・「ちょうどいいタイミングかもしれないですね」
・「散歩の前に、ちょっと寄ってから行こう」
自然な流れで声をかけることで、
「やらされている」という感覚を減らすことができます。
介助中|尊厳を守るために意識したい言葉
介助中は、
相手のペースを尊重していることが伝わる言葉を選びます。
・「ゆっくりでいいですよ」
・「急がなくて大丈夫です」
排泄物や道具について伝えるときも、
淡々と、事務的になりすぎない言い方を意識します。
・「パッドは流さないで、袋に入れてね」
これまで一人でできていた方には、
・「少しだけ、手伝ってもいいかな?」
“全部任せる”ではなく、“一部だけ”という伝え方が、
自尊心を守る助けになります。
介助後|関係を保つための声かけ
介助が終わったあとこそ、
関係を穏やかに保つ言葉が大切です。
・「さっぱりしましたね」
(がんばった事実を、さりげなく認める)
・「大丈夫ですよ」
(無理をしなくていい、という安心感を伝える)
※「たいしたことないよ」という言葉は、
相手の気持ちを小さく感じさせてしまうことがあります。
安心させたい場面でも、使わない方がよい場合があります。
声かけに「正解」はありません。
大切なのは、
相手をコントロールしようとしないこと。
言葉に迷うのは、
相手を大切に思っている証拠。
うまく言えない日があっても、
それで関係が壊れることはありません。
介護者自身が、自分にかけていい言葉
― 「一人実況中継」という方法 ―
排泄介助の場面では、
介護する側も、強い緊張や不快感を抱きやすくなります。
そんなとき、
「落ち着こう」「イライラしちゃだめだ」と言い聞かせるよりも、
今の自分の状態を、そのまま言葉にするほうが、
気持ちが落ち着くことがあります。
これは、感情を抑えるのではなく、
認めて、外に出すための声かけです。
こんな実況でOKです

・「あれ、オレ今、においでイラッとしてる」
・「まいったな……また洗濯か。
手間が増えるの、正直めんどうだと思ってるな」
・「下剤の調整、ほんと難しいよな。
なんとかならないかなぁ」
・「今ちょっと余裕がなくなってきてるな」
・「今日は、ここが一番しんどいポイントだ」
・「疲れてるな。判断力、落ちてきてるかも」
ポイントは「評価しない」こと

これらの言葉に、
「こんなふうに思う自分はダメだ」
という評価を
足さないことが大切です。
事実をそのまま確認するだけで、
気持ちは一段、落ち着きます。
それでもしんどいときは、
「今日はここまでで精一杯だな」
それだけでも、十分です。
気持ちに気づけた時点で、
もう一歩ケアは進んでいます
まとめ

あなたも、守られていい介護者です
男性介護者さんにとって、排泄ケアは
とくに「きつい」と感じやすい場面です。
でも、その「きつさ」を正直に感じていること自体が、
あなたが大切な人を、真剣に思っている証拠でもあります。
この記事で紹介した工夫や声かけを、
全部やる必要はありません。
今日できそうなことを、ひとつだけ。
それで十分です。
一人で抱え込まず、
必要なところは、プロの力も借りましょう。
介護をしているあなたも、
ケアされる側であっていい人です。
排泄の場面で困ったときの具体的な工夫や、
トイレ以外で排泄してしまったときの対処法については、
こちらの記事で詳しくまとめています👇

