
娘:「また、お菓子ばっかり食べて…」
母:「こっちの方がおいしいんだもの」
「甘い」「濃い味」を好むようになって、
自分の料理が美味しくないのかしら…と、
つい苛立ってしまうことはありませんか?
これは料理の腕のせいではありません。
認知症による味覚や嗅覚の低下が原因で、
以前より「味を感じにくくなる」からです。
私も訪問看護やデイサービスで、同じ悩みを抱えた家族の声をたくさん聞きました。
「認知症の味覚変化」に寄り添いながら、
栄養と安心を両立できる食事介助の工夫を
一緒に整理していきましょう。
この記事でわかること
- 認知症の味覚変化と甘いもの・濃い味を欲しがる理由
- すぐにできる3つの工夫
- 声かけの型と実践例
- よくある疑問(Q&A)
認知症の味覚変化と「甘いもの」「濃い味」を欲しがる理由
「せっかく作ったのに、お菓子ばかり…」
がっかりしますよね。
責めたくなる自分もつらい。
でもそれは料理のせいではなく、「認知症による味覚変化」という体のサインです。
結論
認知症で最も低下しやすい味は「甘味」であり、次いで「塩味」の低下も高齢者一般に多くみられます。
そのため甘いものや濃い味に手が伸びやすくなります。
理由
加齢や認知症による嗅覚・味覚の低下、唾液量の減少、服薬の影響などが重なり、
今までの味付けでは「物足りない」と感じやすくなるからです。
具体例
- 醤油や砂糖を多く使いたがる
- デザートや菓子類を中心に食べたがる
- 食事より甘い飲み物を好む
まとめ
「好みの変化は病気が原因」と理解できると、
介護者自身が「自分のせいじゃない」と気持ちを楽にできます。
今日のひとことアクション
「好みが変わったのは認知症による味覚変化。甘いものや濃い味を欲しがるのは病気のせい。私のせいじゃない」と認識しよう。
代わりのものを示す——お菓子もいいけれど、果物もどうかな?

「お菓子ばかり食べちゃダメ!」と言いたくなりますが、完全に禁止すると逆効果です。
むしろ反発や不安が強まり、甘いものへの執着が増すこともあります。
甘味に変わる安心感のある食品を用意しよう

認知症の方は「選べる」ことが安心につながります。
あらかじめ甘味を感じられる代わりの食品を用意しておくと、自然に調整ができます。
具体例
- 果物(バナナ、みかん、いちご、ぶどう)は一口サイズで小分け
- 甘酒(ノンアル・希釈)、ヨーグルト、寒天ゼリー
- さつまいも・かぼちゃの茶巾、にんじんラペの甘酢
- 蒸したさつまいも+少量のアイスでスウィートポテト風
- 市販菓子は個包装にし、1日の量を見える化

食べ過ぎを防ぐミニ盛りテク
- 小皿やミニカップで提供
- トレーに最初から盛り付けて「ここまで」と見える化
- 彩りを工夫して少量でも満足感を
血糖が気になる時の工夫

- 野菜・食物繊維(寒天・わかめ・きのこ)たんぱく質(豆腐・卵・ヨーグルト)を先に
- 果物は食後に回すと血糖上昇を抑える
- 水分をこまめに摂ることで甘味への執着を和らげる
今日のひとことアクション
「お菓子もいいけど、こっちもどう?」の“も作戦”で提案しましょう。
あらかじめ味付け——テーブルに調味料を置かない
ちょっと目を離したすきに、
料理が“醤油漬け”になっていた…
そんな経験はありませんか?
調味料が目に入ると手が伸びやすく、トラブルの原因にもなります。
キッチンで最終調整、食卓はすっきり

- 食卓には調味料を置かず、台所で最終的に味を整える
- 香味野菜(しょうが・ねぎ・しそ)、柑橘、だしで「うま味と香り」を増やす
- 下味をつけてから調理、サラダは和え衣を作ってから提供
うま味で満足度を高める
- かつお・昆布だし、干し椎茸の戻し汁
- ツナ、粉チーズ、鰹節を少量加える
→ 塩分を増やさなくても「濃い」と感じやすくなります。
安全面のチェック
- むせやすい時は温度・とろみ・一口量を調整
- 体重減少・便秘・夜間せきがある場合は専門職に相談
- 水分はこまめに。温かい汁物は嗜好と水分補給の両立に◎
今日のひとことアクション
食卓に出す前に「味・香り・温度」の最終チェックをしましょう。
感じにくい味を言葉で補う——「好きな○○だよ」「今日の庭のトマトだよ」

味覚が弱くても「好きなもの」「今日の出来事」は心を動かします。
言葉が食欲のスイッチになることがあります。
声かけの工夫(実例)
- 「好きな鮭の塩焼きだよ。いつものお茶碗でどうぞ」
- 「庭のトマト、今日赤くなったよ。一緒に食べよう」
- 「あなたの得意な味付けを思い出して、少しだしを効かせたよ」
- 「温かい汁物からどうぞ。香りがいいよ」
- 「今日はここまでにしよう。
楽しみはまたあとでね」
環境づくりのコツ
- テーブルはシンプルに。料理を主役に
- 聞き取りやすい声。短文肯定的な言葉を
- 調理の匂いを少し漂わせて食欲を刺激
今日のひとことアクション
「好き・今日・一緒」の3語をメモして、食卓に貼っておきましょう。
よくある質問(Q&A)
Q1. 甘いものは完全にやめさせるべき?
A. 原則は制限ではなく調整。個包装や時間を決めて量をコントロール。
Q2. 糖尿病が心配です。どうしたら?
A. 医師の指示が最優先。普段は「野菜や食物繊維→主食→少量の甘味」の順で。
Q3. 砂糖ゼロや人工甘味料はどうですか?
A. 過剰使用は味覚のリセットに影響。
まずは総量のコントロールを。
Q4. 食べ飽きや拒否が出たら?
A. 盛り付けや器、温度を変える。声かけは「好き・今日・一緒」で。
Q5. 家族へどう伝えたら?
A. 「味覚変化が背景」「代替案と見える化」「卓上調味料は出さない」の3点を紙にまとめて共有。
まとめ:記事全体の振り返り
- 認知症の味覚変化で甘いもの・濃い味を好むのは自然なこと
- 工夫でできること:
- 代替食品を先に用意(果物・寒天・ヨーグルト・小分け)
- あらかじめ味付けし、卓上調味料は置かない
- 言葉で補う——「好き・今日・一緒」
今日からできるのは、小甘味の計画・食卓の片付け・声かけの3つです。
無理のない一歩を積み重ねて、食卓の笑顔を少しずつ増やしていきましょう。
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