明日は通院日
- 娘「お母さん、お風呂に入ろうよ!」
- 母「え〜、めんどくさいからいいよ〜」
- 娘「だって、汗かいたでしょ?」
- 母「外に行ってないから大丈夫だよ〜」
…こんな会話、よくありますよね。
私がデイサービスで働いていた時も、
「お風呂に入るまで」が一番の山場でした。
すったもんだの末、ようやく入浴すると…
「気持ちいいね〜。
朝風呂なんて贅沢だねぇ〜」
と、まるで別人のように笑顔に。
「そうでしょそうでしょ!もっと早く入ってくれたら、私も汗だくにならないのに…」と
思わずにはいられなかったことも。

どうしたらこの悩みを解決できる?
「昔はあんなに好きだったのに」
と話すご家族。
「お風呂に入りたくない」の背景には
実に様々な理由があります。
今回は、
入浴を拒む理由とその対策について、
実際の介護現場で効果があった方法を
7つご紹介します。
ご家族だけでなく、介護スタッフの方にも
参考になれば嬉しいです。
1.入浴を拒む主な理由
介護現場では「お風呂に入りたくない」
と言う声をよく聞きます。
入浴拒否には、主に
次のような理由が隠れていることがあります

① 手順がわからず面倒
衣服を脱ぐことから始まり、
浴室内でも複数のステップ
(洗髪、洗体、温度調整など)を踏む
必要があり、それが理解しづらくなると
「面倒」と感じるようになります。
② 身体の感覚が鈍くなる
介助中に、冷たいお湯が肌に当たると不快な表情をされる方が多くいます。同じ人でも、同じ温度で「熱い」「冷たい」と反応が変わることもあります。その違和感から、しばらく入浴を拒むことも。
③ 時間の感覚のズレ
「さっき入ったでしょ」
「今日はもう入ったよ」
など、実際には入っていなくても
本人の中では
入浴した記憶がある、
または過去の入浴と混同していることが
あります。
④ 嫌な記憶と結びついている
ある方は、2〜3歳の頃にお風呂場でかくれんぼ。見つけてもらえず怖かった経験がありました。
その記憶が強く残り、閉じた扉の向こうへ入ることが怖くなったのです。
現在はシャワーのみで対処しています。
また、下着を汚してしまっていて、そのことを知られたくないとの思いの方も。
2.結論:入らなくても死なない!
そうなんです。
入浴って、実は入らなくてもすぐに困ることはありません。
しかも、日本では入浴中の死亡事故の方が交通事故より多いと言われています。
補足
「65歳以上の方の入浴中の事故は年々増加しています。
2023年には6,073人が浴槽で亡くなっており、
同年の高齢者の交通事故死亡者数(2,116人)と比べて約3倍にもなります(※nippon.com 2024年2月26日記事より引用)。」
「でも…やっぱり気になるよね」
デイサービスだと「入浴をしてほしい・・」
と思うのも、
介護者としては自然な気持ち。
うまくいかない日もあるのが当たり前。
そんな時こそ
「対策」をストックしておきましょう。
3.対策:いろいろ試してみよう!
① 「声かけのタイミング作戦」
「めんどくさいから、今日はいいわ」
一度拒まれても数分後や別の人からの声かけにはすんなり応じてくれることもあります。
3回くらいは試しても良いと思います。
怒った顔つきになったり、表情がかなり変わってきたら”今日はあきらめる”を選択しても良いかもしれません。
この背景には実は大切なことが含まれています。
”あなたがいってくれるのだから入ろうかな”
と思うまでの信頼関係を築くことです。
一緒にお茶を飲む、
一緒にトイレに行く
一緒にご飯を食べる
私に注目してくれているんだー
一緒にがポイントです💖
② 「先生が言ってたよ作戦」

「お尻に湿疹ができてるから、
先生が薬塗ってって言ってたよ」
“先生”の言葉って、
不思議と効果があります。
あなたのことを誰かが気にしてくれている
そのことが伝わると良いみたいです。
③ 温泉の写真で気分UP作戦
温泉やお風呂の絵本、画像を見せて“気持ちよさそう…”と
イメージを持ってもらうと、
入りやすくなることも。
④ 不安を減らす“ラベル貼り”

シャンプーやボディソープの使い方が分からなくなっていることも。
「頭」「体」と大きくシールを貼ってわかりやすくしてみましょう。
⑤ 浴室の工夫− その1 お湯の温度に注意!
お湯の温度は40℃前後が目安。
冬場は脱衣所や浴室も温める。
シャワーも低い温度が体にかかると不快に感じる方が多いので、事前に温めておくのがおすすめです。
濡れる、冷たいのが苦手な方への工夫も
- シャワーは温度を確かめて、
足元からかける - 濡れた椅子が苦手な方にはタオルを敷く
- 湯船から出て椅子に座る時にシャワーで
椅子を温めると喜ばれます
⑥浴室の工夫−
その2. 色を使って特別扱い !?

色って重要なんです。特に赤や黄色には本能的に反応するみたいです。
デイサービスで勤務している時、あの手この手でトライしてもお風呂に入らなかった方が
この方法で入れた経験があります。
黄色の紙に赤字でお風呂どうぞ や
お風呂の椅子に可愛い&綺麗な黄色のタオルを置く
で、自分は特別扱いされていると感じるようです。
本人にたくさん言葉かけができます。
効果は再現性のあるものではなかったように思いますが、トライしてみる価値はあるかと思います。
赤いTシャツで誘導したりもしました。
ここはトライ&エラーかも知れません。
⑦言葉遣いや印象を変える
本人の職業が教師やお役所勤めが長かった場合、介護者の印象で拒んでいる時もあります。
常に不安な状態なので、服装や頭髪の印象、言葉遣いを変えただけですんなり応じてくれることも。
【番外編その1】お風呂の後の声かけ
⭕️ 「気持ちよかったでしょう」
声かけはすべて肯定で❗️
✘ 「どうだった?」
曖昧な言葉は返事に困ってしまうようです
【番外編その2】爪の状態をチェックしよう
足の爪が伸び放題=認知症が進んでいる兆しのことも。 自宅での対応が難しい時は、
デイサービスや訪問サービスも上手に活用してみましょう。

4.まとめ
入浴は、体を清潔にするだけでなく、
心をほぐす時間にもなります。
”拒む理由探し”よりは”拒む思いを探す”
働きかけが大事なのかも知れません。
でも、無理に入れようとしなくても大丈夫。
その人のペースや気持ちに寄り添いながら、
できる工夫で少しずつ、
心地よい時間へー
つなげていけたらいいですね。
▼ 入浴前後にできるセルフケアはこちらもおすすめです
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