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【読書感想】『父と娘ときどき母の認知症日記』”寄り添う介護”を考える 認知症の家族ケアで本当に大切なこと

介護に役立つ本棚

はじめに

認知症について誰よりも深く理解しているご本人が、「認知症」と診断された――。

そのニュースを知ったときの驚きは、今でも鮮明に覚えています。

私はデイサービスで看護師として働いていて、認知症の方と接する毎日です。それでも「寄り添うって、どういうことだろう」と迷うことがあります。

表紙に並ぶお三方の幸せそうな笑顔に惹かれ、思わず手に取った一冊。

「その身になったとき、何を感じ、家族はどう寄り添うのか」

その答えを知りたくて、ページをめくり始めました。

この本について

  • 書名:『父と娘 ときどき母の認知症日記』
  • 著者:南髙まり
  • 出版社:中央法規

認知症の検査で広く使われている「長谷川式スケール」。それを開発した長谷川和夫先生ご自身が認知症となり、家族と過ごした日々を、娘さんの視点で綴った一冊です。

前著『父と娘の認知症日記』の続編で、あたたかな日記ふうに描かれています。先生は2021年11月、92歳で旅立たれました。この本には、最晩年の日々が残されています。

\認知症になったらおしまいでしょうか?/

本を手に取ったきっかけ

長谷川式スケールを作ったご本人が、当事者になった。

そのことがずっと心のどこかにあって、「その日々を、ご家族はどう支えたんだろう」と知りたくなったのがきっかけです。

読む前に思っていたのは、ふたつ。

当事者の心の内を知りたい。そして、寄り添う家族がどんな想いで日々を送っていたのかも知りたい。そんな気持ちでページを開きました。

本を読んで気づいたこと

読み進めるうちに強く感じたのは、症状の変化を追うことよりも、「その人らしさに寄り添うこと」の大切さでした。

ページを閉じたあとも、介護に迷ったときの心の拠りどころになる気づきがいくつもあったので、3つに分けてご紹介します。

信念は、体にしみついている

人生で大切にしてきた核となるものは、忘れられることはない

印象的だったのは、「人生100年時代に大切なものは?」という問いへの先生の答えです。

「人様に支えられた土台」。

その人にしかない、絆に支えられた土台が大切なのだと、先生は繰り返し語っていました。記憶が薄れていっても、その人が積み重ねてきたものは消えない。「自分で考えて、選んで、意志を持って生きたい」という言葉にも、先生の変わらない芯を感じました。

ケアするとき、いちばん大切なこと

本の中に、先生ご自身が「私の今、想っている一番大切なこと」を語る場面があります。

その答えは、あえて書きません。

ひとつだけお伝えすると、難しい技術ではありません。今日から、誰にでもできることです。ぜひ、ご自身のページで見つけてほしいのです。

そして、この「いちばん大切なこと」を、デイサービスの現場で私がどう実践しているか——
具体的な接し方を、こちらの記事に書きました。

介護に携わる人が、心に留めておきたいこと

介護職や医師に向けて書かれた一節に、ハッとさせられました。

家族の介護のやり方が、望ましくないように見えることがある。でもそれは、なんらかの経緯があって、仕方なく選ばれた場合が多い。だから頭ごなしに否定せず、そこに至るまでの心情に配慮すること――。

看護師として、耳の痛い指摘でした。あれから現場でふと思い出しては、自分の関わり方を確かめるようにしています。

特に印象的だったポイント(ネタバレなし)

「壁を感じるよ」

先生が、ご自身の体験として語った言葉です。自分は何も変わっていないのに、認知症と分かったとたん、周囲のまなざしが変わり、尊厳が傷つけられる。「確かさが失われていく不安」とともに、当事者になったからこそ語れる心の内でした。

そして娘さんが振り返る、こんな言葉も心に残っています。

今思い返すと、特別な時間は、なんでもない日常の積み重ねや対話だった

先生が好きだったというベートーヴェンの「悲愴」は、私も好きな曲。そんな小さな重なりにも、ふっと距離が近くなる一冊でした。

介護の現場にいる私が、考えさせられたこと

コロナ禍の2020年9月、ご両親はそろって老人ホームに入所されます。その決断のシーンでは、「自分が奥様の立場なら、どうするだろう…」と、自然に自問していました。

長谷川先生のあたたかなお人柄、奥様の深い愛情と献身が、日々の小さなやりとりからも伝わってきます。

もうひとつ、他人事にできなかった場面があります。先生がデイサービスについて語るところです。「荷物を置いていきたい。手ぶらで行きたい」――デイサービスで働く私には、どきっとする一言でした。利用者さんと相談しながら調整できたら、それがいちばんいい。現場に持ち帰りたい視点をもらいました。

こんな人におすすめ

読んでほしい


・認知症のご家族に、どう接したらいいか迷っている方
・介護に関わるすべての人(医療・福祉のお仕事の方も)
・心があたたまる介護のエピソードに触れたい方
・「認知症って、こういうもの」というイメージをお持ちの方。いい意味で裏切られます

まとめ:「認知症になったらおしまい」なのでしょうか

「認知症になりたくない」「認知症になったらおしまい」「ならないように予防を」。

普通に暮らしていても、こんな言葉をあちこちで見かけます。介護保険が始まって20年以上経つのに、認知症への偏見は今も根強くて、当事者の方やご家族はどれほど辛いだろうと思います。

でも、本当に「おしまい」なのでしょうか。

「今を生きる」――過去は今、未来を感じるのも今なんだ

たった5文字の言葉だけれど、先生の「今」は、たくさんの思いや希望で溢れていました。認知症は、怖いものではない。読み終えた今、私も心からそう思います。

あなたなら、大切な家族にどう寄り添いますか?

読み終えたあと、心にぽっと温かな灯りが残ります🌿

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