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認知症の親への接し方 「大切に思ってる」が伝わる関わり方

こんな時どうする?(症状別)

「水分をとってって、何度言っても飲んでくれないんです」

「ひとりでトイレに行かないでって言ってるのに、自分で行っちゃって。転びそうになったこともあって…」

デイサービスで働いていると、ご家族からこんな声を毎週のように聞きます。そして、そのあとには決まってこの言葉が続くんです。

「もう、毎日バトルです(笑)」

笑いながらおっしゃるんですが、その笑顔の奥には、「今日も怒っちゃったな」と落ち込む夜が見え隠れします。あなたも、そんな夜を過ごしていませんか?

この記事は、「正しい接し方」のマニュアルではありません。デイサービスの看護師として認知症の方と毎日接している私が実感している、言葉にしなくても「大切に思っている」が伝わる関わり方のお話です。

読者さん
読者さん

優しくしたいのに、つい怒っちゃう。私、介護に向いてないのかな…

こもれび
こもれび

そんなことないですよ。真剣に向き合っているからこそ、ぶつかるんです。まずは「なぜうまくいかないのか」から、一緒に見ていきましょう

接し方がうまくいかないのは、あなたのせいじゃない

「お風呂に入ってくれないんです」「爪を切らせてくれなくて」——ご家族からの相談で多いのが、この2つです。

同じ質問を繰り返すのも、水分を嫌がるのも、お風呂を拒むのも、ご本人が意地悪をしているわけではありません。認知症という病気が、そうさせているんです。

…と書くと、「頭ではわかっているんです。でも心が追いつかなくて」という声が聞こえてきそうです。そうおっしゃるご家族、本当に多いんですよ。それが普通です。毎日向き合っている人ほど、そうなります。

怒ってしまうのは、愛情がないからではありません。むしろ逆です。真剣だからこそ、ぶつかるんです。

家族だからこそ難しい——「昔の親」と比べてしまうから

ところで、不思議に思ったことはありませんか。デイサービスの職員は、どうして穏やかに対応できるんだろうって。

種明かしをすると、私たちは「昔のお父さん・お母さん」を知らないんです。だから、今のご本人を、そのまま見ることができます。

でも、ご家族は違います。てきぱきと家事をこなしていたお母さん。なんでも知っていて頼りになったお父さん。「できていた頃」を知っているからこそ、今の親と、昔の親を比べてしまう。

近しい関係ほど接し方が難しいのは、きっとこのせいです。そして、比べてしまうのは、それだけ長く親のことを見てきた証拠。愛情の裏返しでもあるんです。

だとしたら、接し方の入り口はテクニックではなくて、「今の親を、そのまま見る」ことなのかもしれません。

出来事は忘れても、「気持ち」は残る

もうひとつ、知っておいてほしいことがあります。

認知症の方は、何を話したか・何をしたかは忘れてしまっても、そのとき感じた「嫌な感じ」「安心した感じ」は心に残ると言われています。

旅行の細かい行程は忘れても、「楽しかったなぁ」という気持ちは残っていますよね。あの感覚に似ています。

私が現場で日々感じているのも、まさにこれです。だから、接し方のゴールは「正しくやりとりすること」ではなくて、「いい気持ちを残すこと」。そう考えると、少し肩の力が抜けませんか?

私がデイサービスで心がけていること

ここからは、私が現場で心がけていることを、場面ごとにお話しします。どれも特別な技術ではありません。

「ダメ」を「気持ちいい」に言い換える

爪切りを嫌がる方は、結構いらっしゃいます。そんなとき「切らないとダメですよ」ではなく、こう声をかけます。

「爪が伸びると、せっかくのきれいなお肌を傷つけちゃうから、少し揃えてみませんか」

お風呂なら「汗をかいたから、さっぱりしに行きましょうか」。「〜しないとダメ」ではなく「〜すると気持ちいい」。ポジティブな言葉を選ぶだけで、驚くほど反応が変わります。

手を出す前に、ひと呼吸「見守る」

お風呂上がりに靴下をうまく履けない方がいます。手を出そうとすると「いいよ、自分でやるよ」と怒る方も。

そういうときは、一旦見守ります。そして、うまく履けないなぁという様子が見えたときに、「お手伝いさせてもらってもいいですか」と、すっと入る。すると、あとで「ありがとう」と言ってもらえるくらい、スムーズにいくんです。

先回りして手を出すことが、優しさとは限らないんですよね。

「心配」は、さりげなく

転倒が心配なのに、「大丈夫だから、ついてこないで」とおっしゃる方もいます。

そんなときは、他の仕事をしているふりをして、さりげなくついていきます。すると不思議なことに、気配で気づいているんですよね。でも、怒らない。「私のことを心配してくれてるんだな」というのが、ちゃんと伝わっている感覚があります。

同じ話には、「一生懸命聞くよ」と思いながら

同じ話を繰り返す方に、時間を気にしながら対応すると——これ、結構見透かされちゃうんです。

だから私は、心の中で「一生懸命聞くよ」と思いながら、真剣なまなざしで聞きます。ご本人の言葉をきちんと繰り返して、首で大きくうなずく。すると、あんなに繰り返していた同じ話が、減っていくことがあるんです。「わかってもらえた」と感じられたのかなぁ、と思っています。

じつは、ここまでの4つには共通するコツがあります。心の中で「そのままでいいよ」と思うこと。それだけで自分の表情も声も変わって、相手の反応まで変わります。この不思議については別の記事で詳しく書いたので、よかったら読んでみてください。

認知症介護でイライラするときに読んでほしい「そのままでいいよ」の魔法

「大切に思っている」は、言葉にしなくても伝わる

以前、『父と娘 ときどき母の認知症日記』という本の感想を書いたとき、「いちばん大切なことは、ぜひ本で確かめてください」と伏せていました。今日はその答えを、少しだけお借りします。

それは——「あなたを大切に思っています」という気持ちを伝えることが、いちばん大切、ということ。

「え、そんなこと?」と思うかもしれません。でも私は読んだとき、「そう、それなんです!」と膝を打ちました。毎日の現場で実感していることと、ぴったり重なったからです。

しかも、あえて言葉にしなくていいんです。
気持ちって、行動に出ちゃうものだから。
焦りやイライラが見透かされてしまうのと、おなじ仕組みです。
だったらこの仕組み、「大切だよ」が出ちゃう方に使いませんか。

心で本当に「あなたが大切だよ」と思うと、行動のぜんぶに、自然とにじみ出ます。

  • 寒い思いをさせたくないな → 温かい手で触れる。着替えのとき、肌が出る時間を短くする
    ひざにタオルを一枚かける
  • 穏やかに過ごしてほしいな → 机の周りを整えて、見える景色をきれいにする

忘れられない方がいます。排泄のお世話を、誰にもさせたくなかった方です。おしりふきを温めて、とにかく寒くないように、と配慮を重ねていたら、あるとき本当に穏やかな顔で「ありがとう」と言ってくださいました。

言葉より先に、気持ちが届いていたんだと思います。「そのままでいいよ」「あなたが大切だよ」と思うことは、相手を尊重すること。それは、ちゃんと伝わります。

読者さん
読者さん

言葉にしなくていいなら、不器用な私にもできるかも…

こもれび
こもれび

そうなんです。
「思うだけ」から始めてください。
それがもう、接し方の第一歩です。

それでも強く言ってしまった日は

ここまで読んで「明日からやってみよう」と思ってくださったなら、うれしいです。でも、きっとまた強く言ってしまう日もあります。毎日接している私にだって、あります。

そんな日は、思い出してください。「気持ちは残る」は、いい方向にも働くこと。今日「しまった」と思ったら、明日、いい気持ちをひとつ渡せばいいんです。

そして、自分を責めてしまう夜は、どうかあなた自身のケアを。
がんばっているあなたが倒れてしまったら、元も子もありませんから。

まとめ 完璧じゃなくて、大丈夫

  • 接し方がうまくいかないのは、病気の症状のせい。あなたのせいじゃない
  • 家族だからこそ難しいのは、「昔の親」と比べてしまうから。それは愛情の裏返し
  • 出来事は忘れても、「気持ち」は残る。ゴールは「いい気持ちを残すこと」
  • 「大切に思っている」は、言葉にしなくても、行動ににじみ出ちゃう
  • 強く言ってしまった日は、明日いい気持ちをひとつ渡せばいい

『父と娘 ときどき母の認知症日記』の著者は、「認知症は怖くない」と言います。
現場で毎日接している私も、同感です。

あなたと親御さんの時間に、穏やかに笑い合える瞬間が、少しずつ増えていきますように🌿

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