
3日出ていないけど、大丈夫かな…
高齢の親御さんのお通じが気になると、まず日数を数えますよね。
目安として「3日」という数字が使われることがあります。
ただ、これは境界線ではありません。
それに——
この記事を開いた時点で、本当に3日目なのか、はっきりしていないのではないでしょうか。

たしか月曜は出てたはず…
あれ、火曜だったかな
夜になって急に心配になって、指を折って数えてみる。
でも思い出せなくて、スマホで検索する。
そういう入り口で、ここにたどり着かれた方が多いと思います。
大丈夫です。日数が分からなくても、受診するかどうかは決められます。
訪問看護とデイサービスで働いてきて、現場が実際に何を見て判断しているのかを、そのままお伝えしますね。
「何日まで大丈夫?」に、日数では答えられない
いきなり出鼻をくじくようで申し訳ないのですが、
日数だけで線を引くことができないんです。
その人の普段のペースが、まるで違うからです。
2日に1回の方が3日空けば「様子がおかしい」ですし、
もともと数日に1回のペースの方もいます。
「3日」は目安であって、境界線ではない
私が訪問看護で関わっていた現場では、3日出ていない状態が続くと、医師に報告してお薬の相談につなげたり、飲んでいる下剤を増やすことがありました。事業所の方針やその方の持病、飲んでいる薬によっても違いますから、
どこでも同じというわけではありません。
「3日」という数字は、危険を決める数字というより、
そろそろ一度、様子を確認しようというきっかけでした。
もともと便通の間隔が長い方もいます。
だからこそ、
「何日出ていないか」だけでなく、
「いつもと比べてどうか」
を見ることが大切なんです。
現場が見ているのは、日数ではなく「いつもと違うか」
私たちが訪問して最初に見ているのは、カレンダーの数字ではありません。
ごはんが進んでいるか。
いつもの椅子に、いつもの座り方で座っているか。
話しかけたときの返事が、前回と同じ調子か。
お腹が張っていないか。
吐き気や嘔吐がないか。
便秘に伴って、ほかの変化が出ていないか。
何日出ていないかはもちろん大切です。
でも、その人にとって「いつもと違う」ことも、
同じくらい大切な情報なのです。
日数より先に見てほしい、4つのサイン
受診するかどうかを決めるときは、この4つを見てください。
- 吐いた(何度も吐くときは、特に急いでください)
- 熱が出た
- お腹が張って苦しそう/触るとかたい/強い痛みがある
- 血が出た
こうした症状が便秘と一緒に出ている場合は、「何日出ていないか」を待つのではなく、
医療機関に相談しましょう。
血については、切れ痔のようなこともあります。
ただ、見分けるのは難しいので、一度相談してください。
特に、強い腹痛、繰り返す嘔吐、お腹の張りが強くなっている、ぐったりしている、意識がおかしいなど、急に状態が悪くなっている場合は、早めの受診が必要です。
そして、ここからがもっと大事なところです。
この4つがなくても、
いつもと違うと感じたときは相談を。
毎日そばにいる人の「何か変だ」は、いちばん確かな情報です。
「これといって理由はないんですけど、なんとなく元気がなくて」
この言い方で相談していいんです。
遠慮される方がとても多いのですが、介護する人が感じる「いつもと違う」は、医療者が状態を判断するときにも役立ちます。
「何科に行けばいい?」と迷ったら
まずはかかりつけの先生に相談しましょう。
かかりつけがなければ内科でも構いません。
介護保険を使っている方は、ケアマネジャーさんに相談してもいいでしょう。
夜間や休日に迷ったときは、地域の救急相談窓口(#7119)が使える場合もあります。
便秘が続くと、体はどうなるのか
便秘が続くと、食欲が落ちたり、お腹が張ったりすることがあります。
硬い便がたまることで、さらに出しにくくなることもあります。
「出ない」
↓
「硬くなる」
↓
「さらに出しにくい」
この悪循環が続いてしまうこともあります。
強めのお薬を使っていても、すっきりとは出ない方もいらっしゃいます。
まれですが、便が長く腸内にたまって硬くなり、処置が必要になることもあります。
だからこそ、そこまで行く前の段階で気づけると違ってくるんです。
現場が「下剤」を選ぶ理由
ここは、いちばん正直なところを書きます。
高齢になってくると、生活習慣の工夫だけでは間に合わないことがあります。
食べる量が減り、動く時間が減り、水分も十分にとれない。
薬の影響や病気など、別の原因が関係していることもあります。
(水分のことは水分をとってくれない高齢の親に 訪問看護師が現場でやっていた工夫にも書きました)
そういうとき、現場はお薬を使います。
下剤は、逃げではありません。
「なるべく薬に頼らせたくない」とおっしゃるご家族は多いのですが、出ないまま我慢を続けるほうが体にはこたえます。
効かないからと市販の下剤を追加したり、残っている薬を多めに飲ませたりするのではなく、まず医師や薬剤師に相談しましょう。
高齢の方では、薬の種類や持病によって注意が必要な場合があります。
「たぶん出てる」を「5日です」に変える
ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。
便の記録をきちんとつけておられるご家族は、寝たきりの方を介護している場合が多いです。おむつ交換のたびに確認するので、自然と分かるんですね。
でも、自分でトイレに行ける親御さんだと、こうです。

たぶん出てると思うんですけど…
トイレは一人で行くので、こちらからは見えない。
リハビリパンツ(紙パンツ)に少しついていたから、出たのかな。
そうやって、日が過ぎていきます。
これは、見ていないのが悪いのではありません。
自分でできることには手を出さない。それがご本人の力を守るやり方ですから、むしろ正しいんです。
ただ、「何日まで大丈夫?」と調べている今、その日数がはっきりしない。
ここだけ、今夜から変えられます。
カレンダーに、赤丸をつけるだけ

用意するのはカレンダーとペンだけです。
卓上でも、壁の吊り下げでも構いません。
トイレか、ご本人の部屋——ご本人が毎日目にする場所が続きます。
トイレに貼るのはちょっと、という場合は、
部屋のカレンダーで大丈夫ですよ。
出た日に、赤で丸をつける。それだけです。
もう少し欲が出てきたら、こんな書き方もあります。実際にご家族がやっておられて、よくできているなと思った方法です。
- 朝に出たら、日付の左側に丸
- 昼なら真ん中
- 夜なら右側
- ゆるいときは、丸を塗りつぶす
カレンダー1枚で、出た日・おおよその時間帯・ゆるめだったかどうかまで残ります。ノートに文章で書くより、
ずっと続きます。
ご本人が自分でつけておられることもあります。認知症があっても、トイレの目の前に貼ってあれば続いていた、
という例もありました。長く体に染みた習慣は、案外強いんですね。
記録が効くのは、あなたのためだけじゃない
これは、私自身がいちばん助けられた部分です。
訪問看護は、毎回同じ看護師が行けるとは限りません。
担当が休みの日もありますし、緊急で別の者が伺うこともあります。
そのとき、カレンダーに赤丸があるだけで、
その日はじめて伺った看護師にも、伝わります。
「4日空いていますね、先生に報告しておきます」と、
玄関で靴を脱ぎながら判断できるんです。

あの赤丸には、本当に助けられました。
記録は、関わる人が変わっても情報が途切れないための道具です。
受診したときも同じです。「たぶん4、5日でしょうか」より、カレンダーを見せるかスマホで写真を撮るほうが早いですし、正確です。
まだ間に合ううちに、できること
お薬の前の段階で、やってみる価値があること。
朝ごはんのあと、トイレに座る

食後は腸が動きやすい時間です。
出る出ないは置いておいて、朝食のあとにトイレへ行って座ってみる。それだけで違ってきます。
座り方にもコツがあります。
- 少し前かがみになる(「考える人」のポーズ)
- 足の裏は、しっかり床につける
- 息を吐きながら1から10までゆっくり数える
ぐっと力むと、かえって出口が閉じてしまうことがあります。息を止めないほうが出しやすくなるようです。
長く座りすぎないことも大事です。
出なければ、5分ほどで切り上げてください。
粘っているあいだに足がしびれたり、
立ち上がるときにふらついたりするほうが心配ですし、
痔の原因にもなります。
足台は、安全に置けるときだけ
足台(踏み台)を使うといい、という話もよく聞きますよね。直腸と肛門の角度は、前かがみで足を高くするとゆるむと言われています。理屈としては、確かに理にかなっているんです。
ただ、安全に置けるかどうかが先です。
そして正直なところ——実際に足台を入れたお宅は、そう多くありませんでした。
トイレが狭くて置けない。夜に足元でつまずく。
そして、いちばん多かったのがこれです。
便座の前で向きを変えるのに、時間のかかる方が多いんですね。
すっと回って座る、という動きが難しくなってくると、
足元に物があるだけで、その一歩ぶんの余裕がなくなります。またぐのが危ない、というより、向きを変えるための場所が足りなくなるんです。
無理に買わなくて大丈夫ですよ。前かがみと、朝に座る時間をつくること。この2つのほうが、ずっと続きます。
今夜、やることはひとつだけ
日数を思い出そうとしなくて大丈夫です。
カレンダーに、赤丸をひとつ。
今日出ていたら、今日のところに。
出ていなければ、明日から。
そして受診するかどうかは、4つのサインで。
吐いた・熱が出た・お腹が張ってかたい・血が出た。
そんな変化があれば、日数を待たずに医療機関へ相談しましょう。
どれもなくて、それでも何か変だと感じるなら、
その感覚のほうを信じてください。
毎日そばにいる人にしか分からないことが、
確かにあります。
そして、カレンダーの赤丸は、
「今日もいつもと同じだった」と確認するための、
小さな見守りの記録です。
心配になってここまで調べたこと自体が、もう十分な見守りです。🌿

