はじめに
デイサービスで働いていると、こんなことを感じることがあります。
「この方、何年経ってもあまり変わらないな」
「いつもはっきりされているな」
そういう方をよく観察していると、ある共通点が見えてきました。
脳トレでも、特別なサプリでもありません。
もっとシンプルで、でも確かなことです。
今日はそれを3つ、現場の声としてお伝えします。
その1:よく水を飲む
正直に言います。
認知症の症状が出ている方の多くは、水分を摂る習慣がありません。
実はこれ、意志の問題ではないんです。
年齢を重ねると「のどが渇いた」と感じるセンサーが少しずつ鈍くなります。
気づかないまま水分不足になり、脳がじわじわと疲れていく。
そういうことが日常的に起きています。
一方、認知機能がしっかり保たれている方を見ていると、食事のたびにお茶や水をきちんと飲んでいます。「当たり前のこと」を当たり前にされているんですよね。
1日の目安は1,500ml。でも身構えなくて大丈夫
「1,500mlって多い!」と思いましたか?
でも、こう考えてみてください。
- 朝食にお味噌汁 → 約150ml
- 食後のお茶 → 約150ml
- それを3食分 → 約900ml
残り600mlを食間にコップ2〜3杯飲むだけ。案外いけそうじゃないですか? 😊
注意!水分なら何でもいいわけではありません
ここで現場でよく聞く言葉を紹介します。
「甘いものならいくらでも飲めるんだけどね〜」
…これ、糖尿病の方から実際によく言われます😅
ジュース・スポーツドリンク・甘い缶コーヒーは糖分が多く、血糖値を上げてしまいます。
糖尿病の方はもちろん、そうでない方にも積極的にはおすすめできません。
おすすめの水分
- 水・白湯
- 麦茶・ほうじ茶・薄い緑茶
- 味噌汁・スープ(塩分に注意しながら)
習慣にするコツはたった3つ
研究によると、飲む習慣が自然に定着するまでには約60日かかります。
「21日でOK」という話を聞いたことがあるかもしれませんが、
どうやら科学的な根拠はなかったようです。
でも安心してください。1〜2日飲めなくても習慣は崩れません。
コツはこれだけです。
① すでにある習慣にくっつける
- 食事のたびにコップ1杯
- 薬を飲むときに必ずコップ1杯
- テレビのCM中に一口飲む
② 目に見える場所にコップを置く
「見えないと飲めない」。
それだけのことで、ぐっと飲む回数が増えます。
テーブルの上に、いつものコップをそっと置いておくだけでいいんです。
③ お気に入りのカップを使う
これ、特に女性に効果的です。
中身が水でもお茶でも、好きなカップで飲むだけで気分が上がるんですよね。
「このカップで飲みたいから飲む」でいいんです。
続けるための理由は、なんだっていい。😊
👉「水分をとってくれない…」とお困りの方は、こちらの記事も参考にしてみてください。
【食事の悩み】水分をとってくれないときの7つの工夫
その2:よく歩く
「運動しなきゃ」と思うと、続きません。
これはもう、みなさん共通です😊
でもしっかりされている方を見ていると、ジムに通っているわけでも、
毎日ウォーキングをしているわけでもないんですよね。
日常の中に、歩く場面がある。
ただそれだけなんです。
「運動」じゃなくていい
こんな場面、毎日ありませんか?
- ゴミ出しに行く
- 郵便受けを見に行く
- トイレに立つ
- キッチンと部屋を行き来する
これ、全部「歩いている」んです。
室内のちょこちょこした動きも、積み重なればかなりの歩数になります。
「今日は1歩も歩いていない」という日は、実はほとんどないはず。
まずはそのことに気づくだけで十分です。
なぜ歩くことが脳に良いの?
歩くと心拍数が上がり、脳への血流が増えます。
血流が増えると、脳にたまりやすい不要なものが流れやすくなると考えられています。
難しいことは抜きにして、「体を動かすと、脳も動く」 とイメージしてもらえれば大丈夫です。
研究でも、週3回以上体を動かす習慣がある高齢者は、
そうでない方と比べて認知症になるリスクが約38%低いと報告されています。
「週3回」というのも、ゴミ出しが週3回あれば、もうクリアしているかもしれません😊
習慣にするコツ
① 「歩く」より「用事を作る」
目的があると自然に体が動きます。
スーパー・郵便局・近所への一声かけ、なんでもOKです。
② 少しだけ遠回りする
いつもより1本隣の道を選ぶだけ。
新しい景色は脳への刺激にもなります。
③ 誰かと一緒に歩く
会話しながら歩くのは、実は脳にとって二重においしい習慣です。
体も動く、つながりもできる。その3つ目の共通点にもつながってきます😊
👉 歩くことと脳の関係をもっと詳しく知りたい方はこちら。
歩くと脳が喜ぶって本当?認知症予防に”ちょこっと歩き”が効く理由
その3:誰かのことを気にかけている
これが一番、「へえ!」と思っていただけるかもしれません。
デイサービスでよく感じることがあります。
「息子がまだ結婚しなくてねえ」
「うちの娘、体が弱くて心配で」
「隣のおばあちゃんが最近出てこないのが気になって」
そういうことをよくおっしゃる方が、とてもしっかりされているんです。
一見「心配事が多い人」ですが、見方を変えると
「人とつながっている人」
「役割がある人」
なんですよね。
誰かを心配する、気を揉む、気にかける。
それって脳がフル回転している状態なんじゃないかと、現場で感じています。
研究でも「社会的なつながりや役割があることは、認知症に対する保護的な要因になりうる」と
示されています。心配事は悪いことばかりじゃない、かもしれません。
「役割を奪わない」ことが、実は一番大切かもしれない
ここで、介護をされているご家族にひとつお伝えしたいことがあります。
動作がゆっくりになってきたとき、つい手を出してしまいたくなりますよね。
それは優しさからくる、自然な気持ちです。
でも、その「してあげる」が、本人の大切な役割を奪ってしまうことがあるのです。
洗濯機から洗濯物を取り出す。 ご飯をよそう。 タオルをたたむ。
時間がかかっても、
少しぐらい雑でも、
それはその人が「できること」です。
小さく見えても、本人にとっては立派な「自分の役割」なんですよね。
これ、子育てと似ていると思いませんか?
「自分でやらせる」
「待つ」
「見守る」
手を出しすぎないことが、その人の力を育てる。
介護も子育ても、本質は同じなのかもしれません。
男性介護者の家族がしっかりしている?現場の印象
これは完全に現場の肌感覚なのですが…
男性の介護者がいるご家庭の親御さんが、比較的しっかりされているなと感じることがあります。
理由はおそらく、「程よい距離感」。
悪い意味ではなく、男性は自然と「見守る」スタンスになりやすいのかもしれません。
結果として、ご本人が自分でできることを自分でやり続けられる。
それが「役割」を守ることにつながっているのではないかと感じています。
女性の介護者はとことん寄り添える優しさがある分、つい先回りしてしまう。
その優しさはとても尊いものです。
でも時には、「見守る愛情」も必要なのかもしれません。
習慣にするコツ
① 「できること」を一緒に確認する
本人が今できる小さなことを書き出してみる。意外とたくさんあるはずです。
② 時間がかかっても、見守る練習をする
最初は「手を出したい!」と感じても、まず3秒待ってみる。
その3秒が「見守る愛情」の第一歩です。
③ 誰かとつながる機会を意識的に作る
電話でもLINEでも、近所への一声でも。
「誰かの役に立てた」という感覚が、脳と心を元気にしてくれます。
まとめ:特別なことは、何もいらない
| 共通点 | 今日からできること | |
|---|---|---|
| 1 | よく水を飲む | 食事のたびにお気に入りのカップで1杯 |
| 2 | よく歩く | ゴミ出し・郵便受け・室内の動きでOK |
| 3 | 誰かを気にかけている | 1人に連絡する・役割を守る |
気づきましたか?
3つに共通しているのは、「特別なことを頑張っている」わけじゃないということです。
高いサプリも、毎日のジム通いも、難しい脳トレも出てきませんでした。
当たり前のことを、無理なく、自分のペースで続けている。
それが一番の共通点だったんです。
介護をされているご家族へ、最後にひとつ。
「してあげたい」気持ちはとても大切です。でも時には、その手をそっと引いて、
「見守る愛情」を選んでみてください。
その人が自分でコップを手に取り、自分の足で郵便受けまで歩き、
誰かのことを気にかけながら今日を過ごす。
それが、その人らしく生きることへの、一番の応援になるのかもしれません。
まず今日、お気に入りのカップに一杯の水を注ぐことから、はじめてみませんか。
