デイサービス、そろそろかもしれない。
そう思いながら、ずいぶん長く迷っておられたんじゃないでしょうか。
見学に行ってみようかな、と思えたところまで来られたのなら、それだけでもう大きな一歩です。
とはいえ、いざ行くとなると困りますよね。
何を見てくればいいのか、分からないまま帰ってくることになりがちです。
パンフレットをもらって、お風呂を見せてもらって、「きれいですね」と言って。
それで帰り道に、ふと思うんです。

結局、母に合うかどうかって、どこで分かるんだろう…
デイサービスで働いていると、見学の方をお見かけする場面がよくあります。
熱心にメモを取っておられる後ろ姿を見ながら、いつも思っていることがあるんです。
見るところは、そこじゃないんだけどな。
先に、結論だけお伝えしておきますね。
見学ですることは、5つだけです。
- 親御さんのことを、紙に書き出す
- 予約の電話で、お風呂の入り方を聞く
- 親御さんの好きなことが見られる時間に行く
- 少しだけ、混ぜてもらう
- スタッフの表情を見る
これだけです。
なぜこの5つなのかを、順番にお話ししますね。
見学の前に、親御さんのことを書き出してみてほしい
1つめです。
施設のことは、いったん置いておきます。
先に見るのは、親御さんのほうです。
デイサービスは、種類がずいぶん増えたように思います。
機能訓練に力を入れているところ。入浴を丁寧にしているところ。一日にぎやかなところ。静かに過ごせるところ。
選べるのはありがたいことですよね。
でもその分、何を基準に選べばいいのか分からなくなりました。
基準は、施設のほうにはありません。
親御さんのほうにあります。
書き出すのは、こんなこと
紙でも、スマホのメモでも構いません。
思いつくままで大丈夫です。
- おしゃべりが好きか、静かにしているほうが好きか
- 人の世話を焼くのが好きか
- 一人で黙々と何かをするのが好きか
- でも、人の輪の中にはいられるか
- 体を動かすのが好きか
- 歌うのが好きか
- 大きなお風呂は平気か、一人で入りたいか
- 昔、どんなお仕事をされていたか
- 何が得意だったか
いちばん最後の「得意だったこと」まで書けたら、
かなり強いです。
得意なことが、そのまま居場所になる
ある方は、折り紙がとてもお好きでした。
難しい作品も折れるほどで、作品を持って来られることもありました。
でも最初のころは、それを一緒に楽しめる方が、
なかなかいなかったんです。
受け取ってくれる相手が、いるかどうか

ところが、あるとき折り紙に興味を持ってくださる方がいて。
「これ、どうやって折るの?」
そう尋ねられたんです。
そこからその方は、嬉しそうに折り方を教えるようになりました。
来られる日の様子が、少しずつ変わっていったように思います。
得意なことがあるだけではなく、それを受け取ってくれる人がいる。
それだけで、その人の中に「ここで自分ができることがある」という感覚が生まれることがあります。
同じ方でも、場所によって、そうなることもあれば、
ならないこともあるんですね。
デイサービスを選ぶときに見てほしいのは、
そんなところです。
親御さんの「好き」や「得意」が、その場所で誰かとつながれそうか。
「デイサービス」と言わずに誘う
書き出した紙は、もう一つ役に立ちます。
「デイサービスの見学に行こう」
そう言って、素直に「はい」と言ってくださる方は、あまりいらっしゃいません。
ご家族が実際に使っておられた言い方を、いくつか。
・いろんな人と交流できる場所に行ってみない?
・家族以外の人と触れ合える場所があると、刺激があっていいみたいよ
・ちょっとお茶が飲めるところに行ってみない?
お気づきでしょうか。
どれも「デイサービス」と言っていません。
その言葉が出たとたんに「私はまだそんな歳じゃない」となってしまうことが、よくあるんですね。
だから、行き先ではなくそこで何ができるかで誘う。
「お茶が飲めるところ」——これはうまいなと思いました。
歌が好きな方なら「歌の会があるらしいよ」でもいいわけです。
「〜みたいよ」と伝聞にしているのも、押しつけにならなくていいですね。
お風呂で、通えるかどうかが決まることがある

ここからは、予約の電話の話です。
デイサービスの一日で、いちばん大きな場所を占めているのはお風呂だと思っています。

お風呂って、どこも似たようなものでは?
それが、いちばん違うところなんです。
私は今、定員20人で大浴場のあるデイサービスにいます。
その前は、一軒家を改築した小規模のところにいました。
大浴場のあるところは、何人かで一緒に入ります。
小規模のところは、ご自宅とほぼ同じ大きさの浴槽で、一人ずつ。
どちらがいいという話ではなくて、合う・合わないがはっきり出ます。
「みんなと入るのは、ちょっと」
大きなお風呂で、おしゃべりしながら入るのが楽しいという方がいます。
その一方で、人と一緒に入るのがどうしても苦手な方も、たまにいらっしゃいます。
そういう方には、女性の最後の順番にする、といった配慮をします。
湯船に他の方がいない時間を作るわけです。
それでも、だめなことがあるんですね。
浴室が一人になっても、脱衣所で誰かと一緒になる。
そこがどうしても嫌だという方が、いらっしゃいます。
そして、だんだん来られなくなります。
お風呂が理由で、足が遠のいてしまう。
もったいないなと思いながら、何度か見てきました。
こういう方は、一人ずつ入る小規模のところが合うんだろうなと思います。
ご自宅のお風呂とあまり変わらない大きさで、脱衣所も一人です。
賑やかなのが好きな方なら、大浴場のほうが楽しいはずです。
「今日は誰と一緒だった」なんて話をされていますから。
だから、電話をかける前に、書き出した紙をもう一度見てください。
・大きなお風呂は平気か
・人と一緒に入るのが、苦手ではないか
もし苦手そうなら、電話のときに一言そえてみてください。
「母は、人と一緒に入るのが苦手なんですが」
たいていの施設は、できることを教えてくれます。
リフトは、あまり心配しなくていい
「リフトのあるところを探しています」と言われることがあります。
私の知る範囲では、浴槽の大きさに関わらず、備えているところがほとんどです。
一人用の浴槽のところにも、大浴場のところにもありました。
ただ、設備は施設によって違いますから、必要なら電話で一つ聞いておけば済みます。
それより先に確かめてほしいのが、さっきの「人と一緒に入れるかどうか」のほうです。
若い方ほど、気にされることがある
これは、私が見てきた範囲の話なのですが。
若くして認知症が進んでこられた方は、大勢でのお風呂を苦手にされることが多いような気がしています。
理由をうまく言葉にされないこともあります。
ただ、浴室のほうへ足が向かない。それだけは、はっきり分かるんですね。
無理に慣れてもらうより、はじめから合う場所を選んだほうが、ずっと早いと思っています。
午前と午後、どちらに行くか

これも、お風呂の入り方で決まります。
大浴場のあるところは、午前中にほぼ全員がお風呂に入ります。
順番にお名前を呼ばれて、浴室へ。脱衣所も含めると、フロアからごっそり人がいなくなります。
残っているのは数人で、塗り絵をしたり、うとうとしたり。静かなものです。
一軒家の小規模だと、これが逆でした。
一人ずつしか入れないので、大半の方はフロアに残っていて、体操やレクリエーションをしながら、一人ずつお風呂に抜けていきます。
午前に見学に来ていただいても、午後とそんなに変わらない風景が見られました。
つまり——大きなお風呂のところなら午後、一人ずつのところなら午前でも大丈夫、ということです。
今の施設に見学のお電話をいただいたら、たぶん午後をご案内します。
午前だとお風呂の出入りしか見ていただけないからです。
もし時間を指定されたら、理由があってのことなので、そのまま乗ってください。
電話で聞くのは、この2つ
何も言われなかったときは、こう聞いてみるといいと思います。
・「お風呂は何人ずつ入られますか」
・「レクリエーションは何時ごろですか」
この2つで、その施設の一日がだいたい見えます。
そして、時間を決めるときも、書き出した紙の出番です。
体を動かすのが好きな方なら、個別機能訓練や体操の時間。
歌やおしゃべりが好きな方なら、レクリエーションの時間。
うちだと13時ごろから機能訓練や体操、14時ごろからレクという流れです。
ここは施設によって違います。
傾向としては、
お父さまのことで来られた方は体を動かす場面を、
お母さまのことならレクリエーションを、
熱心にご覧になることが多いです。
ただこれはあくまで傾向で、書き出した紙のほうが当てになります。
ちなみに見学は、一日がかりの覚悟で来られる方が多いのですが、実際は30分から1時間ほどでお帰りになる方がほとんどです。
午後半休で足ります。有給を丸一日使わなくても大丈夫ですよ。
見るだけで帰らないでほしい
ここからは、見学当日の話です。

見学で参加なんて、していいんですか?
参加された方は、数えるほどしかいない
長く勤めていますが、催し物に参加された見学の方は、
数えるほどしかいらっしゃいません。
ほとんどの方は、ご家族やケアマネジャーさんと一緒に来られて、
少し離れたところからご覧になっています。
それが普通です。私も、見る側だったらそうするかも。
でも数ヶ月前に、参加された方がいらっしゃったんです。

ちょうどテーブルでゲームをしている時間でした。
真ん中に旗を立てて、まわりに置いたお手玉を取っていく。旗が倒れたら負け、というものです。
そのあと、坊主めくりもしました。
スタッフが「よかったら、どうぞ」と声をかけたら、
その方は席についてくださって。
笑い声が、たくさん出たんです。
利用者さんたちは、知らない方が混ざっていても、そんなに気にされません。
「あら、お上手ねえ」なんて言いながら、いつも通りに続いていきます。
そしてお帰りになるとき、90代の利用者さんが、こう言われたんです。
「待ってるよー」
そこでまた、みんなで笑って。
その方は、たしか次の週から通所が始まったと思います。
参加しても、決まらないことがある
つい先日も、息子さんと来られた男性が、
個別機能訓練に一緒に参加されました。
ただ、その方はご利用にはつながっていません。
それでいいんだと思います。
やってみて「ここは違うな」と分かったのなら、
それも見学の成果ですから。
参加してみないと分からなかったことです。
5分でもいい。全部やらなくていい
たぶん一度は、スタッフのほうから
「よかったら参加しませんか」と声がかかります。
そのときは、「ありがとうございます」と言って、
混ぜてもらってください。
最後までやり切る必要はありません。
5分でも、一回だけでも十分です。
短い時間でも、混ざるのと見ているのとでは、
持ち帰るものがまるで違います。
私が見ているのは、利用者さんではなくスタッフの表情
見学のポイントとして
「利用者さんが笑顔かどうか見ましょう」と
書かれているのを、よく見かけます。
もちろん、大事です。
ただ、中で働いている私がいちばん見ているのは、
そこではないんです。
見ているのは、この3つ
- 働いている人が、楽しそうか
介護の仕事が好き、高齢者の方が好き。
そういうスタッフが多い職場は、表情が朗らかです。
年齢層にも幅があると、ケアに深みが出ます。 - 目線を合わせて話しかけているか
車椅子の方や、椅子に座っている方に話しかけるとき。立ったまま上から話しているのか、しゃがんで同じ高さになっているのか - お名前で呼んでいるか
「おばあちゃん」「おじいちゃん」になっていないかどうか。今はそういう呼び方をするところは少ないと思いますが、そばで聞いていると分かります
なぜ、表情なのか
見学の日は、どこの施設もきれいにしています。
書類も揃っていますし、説明も丁寧です。
でも、表情までは作れません。
表情には、その人の心が全部出てしまいます。
立ち居振る舞いにも、そのまま出ます。だから表情を見ると、大体わかるんですね。
それにもうひとつ。
利用者さんの顔ぶれは、日によって変わります。
男性が比較的多い曜日、賑やかな曜日など。
でもスタッフの向き合い方は、変わりません。
だから当てになるんです。
ここは、専門の知識がなくても見られるところです。
むしろご家族のほうが、よく見えるかもしれません。
生活相談員さんに聞いておくといいこと
見学のときは、生活相談員が付いてくれることが多いです。

ご利用者さんと施設、ご家族とケアマネジャーさんのあいだの橋渡しをしてくれる人です。何か困ったことがあったら、いろんな人をまとめて動かしてくれます。
施設の顔、と言ってもいいくらいの存在ですね。
私なら、これを聞きます
私だったら、この3つを聞きます。
- 介護度は、どのくらいの方が多いですか
- 「うちには合わない」と言ってお帰りになるのは、
どんな人ですか - 見学から利用開始まで、どのくらいかかりますか
「介護度は、どのくらいの方が多いですか」
あわせて「要介護5の方も、いらっしゃいますか」まで聞けると、なおいいです。
私がいちばん聞きたいのは、これです。
ここ数年、デイサービスにも介護度の高い方が増えてきました。昔は要介護5の方をほとんどお見かけしなかったのですが、今は要介護4や5の方が結構いらっしゃいます。
要介護5となると、ご自分で飲み食いをするのが難しい方が多いです。
水分を取るところから、お昼ごはんを食べるところまで、スタッフが対応します。
それだけの人手が要りますし、医療の知識も必要になります。
受け入れているということは、それができる施設だということです。
そしてもうひとつ。そういう方の多くは、長く通ってこられた方なんですね。
少しずつ体の力が落ちてきても、同じ場所に通い続けていらっしゃいます。
親御さんが今はお元気でも、この先のことは分かりません。
介護度が上がっても通い続けられる場所かどうか。
慣れた場所を変えずに済むというのは、ご本人にとってもご家族にとっても、大きいことです。
「『うちには合わない』と言ってお帰りになるのは、どんな人ですか」
これも聞いてみてください。
答えにくい質問です。だからこそ、正直に話してくれるかどうかで、その施設の姿勢が見えます。
「そんな方はいませんよ」と流されるより、「こういう方には向かないかもしれません」と言ってくれるほうが、私は信頼できると思っています。
「見学から利用開始まで、どのくらいかかりますか」
段取りが立ちます。
ケアマネジャーさんとのやり取りもあるので、思っているより日数がかかることもあります。
(デイサービスだけでは足りないと感じたときは、在宅介護をひとりで抱えないために 介護保険外のサービスを味方にしようも合わせてどうぞ)
帰り道に、よかったことを一つだけ言い合う

見学が終わって、外に出たところで。
「同じ年代の人がたくさんいたからよかったね」
こんなふうに、よかったことを一つだけ、口に出してみてください。
いいこと探しです。
見学のあとって、どうしても「どうだった?」「うーん」で終わりがちなんですよね。それだと、せっかく行ったのに何も残りません。
小さくても、よかったところを一つ共有しておく。
それだけで、次の話がしやすくなります。
ご本人が一緒でなかった場合は、家に帰ってから伝えてください。
「あなたの好きそうな歌の時間があったよ」でも十分です。
今日見たのは、その日の顔
もうひとつ、お伝えしておきたいことが。
デイサービスは、曜日によって来られる方が違います。
うちは定員20人ですが、水曜日は通院の方が多くてお休みが重なります。
先週の水曜日は、半分の10人。
10人くらいだと、とてもゆったりしているんです。
集う方が変わると、その方たちの化学反応で、笑いが多い日もあれば、静かだけれど穏やかな日もあります。同じ施設なのに、日によって顔が違うんですね。
だから、一日見ただけで見極めようとしなくて大丈夫。
その日たまたま静かだった、ということも十分あります。
一か所で決めなくていい
見学に行く前って、「今日で決めなきゃ」と思ってしまいますよね。
予約して、休みを取って、行くわけですから。
でも、一か所目で決まらなくていいんです。
二か所目に行ってはじめて、一か所目のよさが分かることもあります。「ここは違うな」と思って帰ってきた日も、無駄にはなりません。比べる目ができた、ということですから。
通い始めてから合わないと分かることだって、あります。そのときは変えていいんです。
ケアマネジャーさんに言えば、また一緒に探してくれます。
もう一度、この5つだけ
見学は、お見合いというより下見に近いのかなと思います。
- 親御さんのことを、紙に書き出す
- 予約の電話で、お風呂の入り方を聞く
- 親御さんの好きなことが見られる時間に行く
- 少しだけ、混ぜてもらう
- スタッフの表情を見る
それだけで、十分です。
やっていることは施設選びなのですが、探しているのは施設ではないような気がしています。
折り紙の方は、「どうやって折るの?」と聞かれて、はじめて教える人になりました。
持っているものを、誰かが受け取ってくれる。たったそれだけで、その人の居場所ができます。
親御さんが「ここにいていい」と思える場所。
見学で探しているのは、そこなんだと思います。
人の手を借りるのは、投げ出すことではありません。
続けていくために、いちばん賢いやり方です。
(そのあたりの後ろめたさについては、認知症の親を施設に入れる罪悪感 施設選びの前ににも書きました)
一度で見つからなくても、大丈夫ですよ。
あとは帰り道に、よかったことを一つ。
それが言えたら、その日はもう成功です。🌿

