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認知症の人は、実は減っています 看護師が学会で聞いてきた、家族が気づける最初のサイン

こんな時どうする?(症状別)

実家に帰るたび、なんとなく気になる。

前より話さなくなった気がする。
好きだったことを、しなくなった。
「ちょっと面倒くさい」と言うことが増えた。

でも、もの忘れがひどいわけではない。

だから、
「認知症かもしれない」
と口にするほどでもない。

——これって、年齢のせい?

そう思ったまま、時間だけが過ぎていくことがあります。

私自身、認知症のサインといえば、
「同じことを何度も聞く」
「財布を盗られたと言う」
そんな、わかりやすい変化を思い浮かべていました。

ところが先月、認知症をテーマにした学会の公開シンポジウムに参加して、そのイメージが少し変わったんです。

そこで聞いたのは、

「家族が最初に気づきにくいのは、もの忘れではない」

という話でした。

キーワードは、
「やる気」と「意欲」。

そして、もう一つ。

MCI(軽度認知障害)といわれても、
その後、元の状態に戻る人がいる。

この話を聞いたとき、私はデイサービスで出会った、ある90代の女性の顔を思い浮かべていました。

半年で、覇気が消えていった

私が看護師として働くデイサービスに、90代の女性がいらっしゃいます。
診断は受けていないようですが、直近のことがあいまいになってきている方です。

以前は、とても元気な方でした。
ほかの方のテーブルまで、自分から話しかけに行く。日中も何度もお手洗いに立って、「歩かなきゃだめだ」とご自分に言い聞かせるように歩いていらっしゃる。そういう方でした。

それが、この半年ほどで変わってきたんです。

お風呂の時間まで、椅子に座って眠り込んでいることが増えました。
お誘いすると、必ず一度は「入りたくない」と言われます。
体操にも、あまり乗ってこられなくなりました。

もの忘れも、たしかにあります。同じ話を繰り返される。同じ質問を何度も聞かれる。まわりのみなさんの中でも「おや?」と思う場面が増えてきました。

でも、私がいちばん引っかかっているのは、そこではないんです。

こもれび
こもれび

この半年のあいだに、生きる力というのか——
目の力、手の力、覇気を感じなくなってきて。
とにかく、しゃべらなくなってきたなあ、と思うんです。

目の力。手の力。
検査の数字には出ないところ。
ご家族に「最近どうですか」と聞いても、たぶん「変わりないですよ」と返ってくる。

あなたのご実家でも、いま起きているかもしれません。

午後の椅子で眠り込む高齢女性。認知症の前ぶれとしての意欲の低下

家族がいちばん気づきにくいのは「やる気」

シンポジウムの話に戻ります。

その日いちばん驚いたのは、実は数字の話でした。最初の先生が、こんな問いかけから始めたんです。「認知症の人は、増え続けているのでしょうか?」

増えている。私はそう思っていました。
でも、逆でした。
65歳以上のうち認知症とされる人の割合は、2012年の15.0%から2022年は12.3%に下がっています⤵️
代わりに増えたのがMCI(軽度認知障害)で、13.0%から15.5%へ。足すと28.0%と27.8%。
合計は、ほとんど変わっていません。

つまり、脳に変化のある人が減ったわけではないんですね。
同じくらいの人が、より早い段階で見つかるようになった。
数字が言っているのは、たぶんそういうことです。

こもれび
こもれび

認知症という言葉を、みんなが知るようになりましたよね。
予防にアンテナを張る人も増えました。
だから早く見つかる。これはいい傾向だと思うんです。

だからこそ、話は「早い段階のサイン」に進みます。

よく知られているサインは、もの忘れです。最近のことを覚えていられない。言葉が出にくくなる。
ご存じの方も多いと思います。

でも、いちばん最初のカギはそこではない、と先生は言われました。

「やる気」「意欲」

やろうと思ったのに、「まあ、いいか」とやめてしまう。
そして、それが「めんどくさい」に変わってきたときが、ひとつの節目なのだそうです。
先生は「そこから一気に進む」という言い方をされていました。

やる気や意欲は、脳の前頭葉というところが担っています。

ただ、ここは正直に書いておきたいのですが。

「まあいいか」って、私はけっこう好きな言葉なんです。

年を重ねて、肩の力が抜けて出てくる「まあいいか」もありますよね。
めんどくさいなあ、と思う日だって、私にもあります。

だから、その言葉が出たから心配、という話ではありません。

見るのは、言葉そのものではなくて、その人の中での変わり方なんだと思います。

前はやっていたのに、やらなくなった。
前は自分から動いていたのに、誘われないと動かなくなった。

たとえば、編み物をしなくなった。
庭に出なくなった。
そんな小さな変化です。

「怠けている」に見えてしまう

もの忘れは、話していれば気づきます。同じことを二度聞かれれば「あれ?」と思う。
でも「やりたい気持ちが減っている」は、外から見えません。

こもれび
こもれび

やる気って、外からは、わかりにくいんですよね。

しかも、見えないだけならまだいいんです。
まわりからは、怠けているように、だらしなくなったように見えてしまうことすらあります。
「お父さん、最近ぐうたらになったね」で終わってしまう😅

だからこそ、そばにいる家族が先に知っておくと違うんです。

「前と何か違うな」

そう思ったら、すぐに病気と決めつけなくていい。
ただ、少しだけ、その変化を見ておく。

知っていれば「あれ?」と気づける。
気づければ、その人の「まだあるもの」を見つけられるかもしれません。

でも、全部なくなったわけじゃない

さきほどの90代の女性のことを、もう一度書かせてください。

覇気を感じなくなった、しゃべらなくなった、と書きました。
でも、まだ時々あるんです。好きな曲が流れると、ぱっと笑顔になって、体を動かされる。

そのときだけ、目に力が戻ります。

なくなったように見えて、全部がなくなったわけではないんですね。

その人の中に、まだ残っている「やりたい」。
あの笑顔は、たぶんそれです。

好きな曲に合わせて動く高齢女性の手。認知症でも残っている力

軽度認知障害から、戻る人がいる

MCIと言われたら、あとは進んでいくだけ——そう思っていませんか。
私も、どこかでそう思っていました。

福岡県の久山町という町で、住民の方を何十年も追いかけている研究があります。
日本では珍しい、経年変化を追う研究です。
そこで、MCIと診断された方のその後5年間を見たところ、3割の人が正常な状態に戻っていたという報告が紹介されていました。(認知症に進んだ方が約3割、変わらなかった方が約2割です)

もちろん、これは「MCIは治る」という話ではありません。ひとりひとり事情も違います。
それでも、進む一方ではないということは、知っておいていいと思うんです。

では、戻る人と戻らない人は、何が違うのか。

会場の質疑応答で、まさにその質問が出ました。「どんな指導をされていますか?」と。
先生の答えは、意外なものでした。

戻る人には、モチベーション・生きがい・承認欲求が強い人が多い。

それを一緒に見つけて、実行してもらうと、戻る人がいる。
逆に、学歴が高くて人の話を聞かない「俺流」の人は、戻りにくいとも💦

薬の話でも、食べ物の話でもありませんでした。

その人の中に残っている「やりたい」を、まわりが見つけられるかどうかだったんです。

こもれび
こもれび

これ、現場でも感じます。
プライドが壁になる。
人の話を素直に聞いて、受け入れられる力。
それが大きいんだと思います。

「まだ大丈夫」と思いたくなる気持ちは、よくわかります。
私も、自分の親のことになると、きっと同じです。

でも、だからこそ、「まだ大丈夫」と思っている今のうちに、その人の「やりたい」を探してみる。
それは、できることのひとつなのかもしれません。

そして、その人の「やりたい」を見つけられるのは、たぶん検査ではなくて、

そばにいる人です✨

小さな芽をそっと手で包む。軽度認知障害から戻る人がいるということ

「うちの親、そうかも」と思ったとき

気になることがあったとき、次に困るのが「で、どうしたらいいの」というところですよね。

まず、決めつけないでいいと思います。

やる気が落ちる原因は、ひとつではありません。高齢の方のうつでも、よく似た見え方をします。
持病や薬の影響のこともあります。ここは、見ただけでは分けられないところです。

そして、いきなり「認知症の検査を受けよう」と言わなくても大丈夫です。

相談できる場所は、いくつかあります。

  • かかりつけの先生。いつもの受診のときに「最近、こういうことがあって」と話すだけでいいんです
  • 地域包括支援センター。市町村が設置している、高齢の方のための総合相談窓口です。全国に5,000か所以上あります(厚生労働省)。ご家族からの相談を受けているところが多いので、「◯◯市 地域包括支援センター」と検索して、近くの窓口に電話してみてください
  • 認知症疾患医療センター、もの忘れ外来。都道府県や市が指定した専門の医療機関です。
    お住まいの都道府県のホームページに一覧が載っています

「病院に連れて行く」より、「まず自分が相談してみる」ほうが、ずっと軽い一歩です。

まとめ 「もの忘れ」だけを見ていませんか

もの忘れは、誰でも年を重ねればありますよね。
でも、本当に見てほしいのは、そこじゃないんです。

その人の中に、まだ残っている「やりたい」。

「やりたいことある?」と聞いても、
「ないない、もうこの年だから」と返ってくることがあります。

だから、言葉だけで判断しなくてもいい。

聞くのではなく、見る。

前はしていたのに、
最近しなくなったことはないでしょうか。

好きだったこと。
自分からしていたこと。
夢中になっていたこと。

そして、ときには、ふと笑顔になる瞬間。

その人の中にまだ残っている「やりたい」を見つけること。
それは、そばにいる人だからこそ気づけることなのかもしれません。

早く気づくことは、こわいことじゃない。
その人の「まだあるもの」に気づくことでもある。🌿

この記事で参考にした資料

そばにいる人にできることを、こちらにも書きました👇

認知症の親への接し方 「大切に思ってる」が伝わる関わり方
「水分をとってって、何度言っても飲んでくれないんです」「ひとりでトイレに行かないでって言ってるのに、自分で行っちゃって。転びそうになったこともあって…」デイサービスで働いていると、ご家族からこんな声を毎週のように聞きます。そして、そのあとに…
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今日のヒントが、少しでもお役に立てますように(看護師姿の猫のイラスト)

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